苦くも柔い恋


「時間になっても和奏が来ないから先に見ようってなって、まあ運良く2人とも合格してて和奏はどうしたって聞けば…その後はお前が見た通りだよ」

「…うそ、」

「嘘ついてどうなるんだよ。ただでさえこんな絶望的な状況なのに」


そう言って千晃は肘をつき、そこに顔を乗せた。


「不意を突かれて抵抗できなかったのは悪かった。けど俺は一度だって美琴をそういう目で見たことなんかねえ」

「…なら、どうしてそう言ってくれなかったの」


ぽとりと力無く手から箸が落ち、放った言葉は震えていた。


「あの時そう言ってくれてたら、私は…!」


気付いた時には泣いていた。

だから嫌だったんだ。
千晃が絡むとすぐに泣いてしまう。

この男には泣かされてばかりで、嬉しかった事なんてほとんど無い。

なのにどうして、彼が美琴にそういう感情が無いと知って嬉しいって思ってしまうの。



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