苦くも柔い恋




敢えてずっと触れないようにしていたけれど、こうなった原因を辿ればあの出来事に行き着く。

美琴ははっきりとそういう関係——千晃と付き合っていると口にした。

キスまでしていたのだから信ぴょう性は高いけれど、少しくらいは千晃の話を聞いてみてもいいかもしれないと、今になってやっと思えるようになったのだ。

泣くでも責めるでもなくただ静かに見つめれば、千晃はゆっくりと箸を置いた。


「…逆に俺が聞きてえよ。なんで美琴があんな事言ったのか」


そう言った千晃の言葉に、嘘はなさそうだった。


「美琴とは何もねえよ。あの日だって勝手に押しかけてきて一緒に発表見ようなんて言うから勝手にしろっつっただけだ」

「部屋まで上げておいて?」

「すぐに和奏も来るって、あいつが言ったんだよ」


初めて聞くその言葉に、驚きで返す言葉を失った。



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