殺したいほど憎いのに、好きになりそう

女子中学生に臆する


 突然、背後から胸をわしづかみにされて、恐怖した俺の身体は鳥肌が立っていた。
 キッチンで洗い物をしていたはずの優子ちゃんは、既に全裸で俺の後ろに座りこんでいる。
 俺の背中に自身の胸をぴったりと合わせて……。

 なんでだろう? 前世の男時代だったら、こんな若い女の子の体温を肌で感じられてドキドキするのに。
 今は不快感しかない。それにすごく怖い……。

「あ~いちゃん! 二人だけのお風呂、久しぶりだね?」

 言いながらも、未だに俺の胸を揉みまくっている。
 なんでこんなに触ってくるの? 女の子同士だとこういうスキンシップって普通なのかな。
 
「え? あ、うん……そうだね」
「ふふふ、前に泊まった時は嫌がったのに、今は嫌がらないんだぁ~」

 前に泊まった時というのは、以前の藍ちゃんのことか?
 ならば、俺も嫌がるべきかな。

「あ、あの……頭を洗っている際中だし、その触るのはやめてくれる?」
「ん~ いいけど、藍ちゃんの身体を私が洗わせて!」
「いいよ」

 なんて簡単に返事するんじゃなかった。
 身体を洗うというから、背中ぐらいと思っていたけど。文字通り全身を丁寧に洗われてしまった。
 つまり、デリケートゾーンまでだ……。
 今夜俺は処女を守りきれるだろうか。

  ※

 お互いに身体を洗ったので、湯船に浸かることにした。大きなヒノキ風呂なので、二人して一緒に入る。
 向かい合わせになり、優子ちゃんが一方的に話を続ける。

「でもさ、『最近の藍ちゃんが冷たい』って前に私が言ったこと。ウソなのかもしれない」
「え? どういうこと?」
「なんていうか、今日いろいろと藍ちゃんに触れたり、話したけど。昔の藍ちゃんだったら怒ってたもん。今の藍ちゃんの方が優しいのかも」

 まあ今の藍ちゃんは、中身がおっさんだからな。
 女の子同士の付き合いとか分からないし、受け入れるしか無いんだ。

「じゃあ前の私が怒った時って、どんな風に怒ってたの?」
「えっとね……前回、泊まった時にお尻を触ったら、それ以来口を聞いてくれなくなったね。一ヶ月以上」

 藍ちゃんて、本当は優子ちゃんのことを嫌っていたのではないか?
 
「そうなんだ。他にはどんなことで怒ってたの?」
「えぇ……あれ以上怒ったのは、小学生の時の修学旅行だね。旅館の浴場で私が今日みたいに胸を触ったら、しばらく無視されたかな」
「……」

 どう考えても、優子ちゃんの言動が問題では?

  ※

 しかし、あれだな。こうやって裸の女子中学生を目の前にしても、何も感じない俺ってもう男じゃないのかな。
 前世の男時代の俺だったら、理性を保つ自信がない。
 というか、相手が優子ちゃんだから何も感じないのかな?
 だって腐女子だし、それに胸も未発達……というか、”二つの(つぼみ)”も茶色で可愛くない。

 それなら、前に水族館で見た鬼塚の蕾の方がピンク色で可愛かった……って、なにを比較してんだ俺。
 頭の中であの濡れた二つの蕾を思い出し、頬が熱くなってしまう。
 優子ちゃんがその異変に気がつく。

「あれ? 藍ちゃん、顔が赤いよ。どうしたの?」
「いや、これは違くて……お湯にのぼせたのかも」
「なんだ~ 私の裸を見て、恥ずかしいのかなって思ったよ」
 
 と嬉しそうに笑う優子ちゃん。
 もし中身が俺と言うおっさんだと知ったら、ショックでぶっ倒れそう。


 その後は特に何事もなく、お風呂から無事に脱出できた。
 濡れた身体をバスタオルで拭いても、優子ちゃんは浴室で黙って順番を待っている。
 俺がもこもこパジャマに着替えると「先に二階で待っていてくれ」と言われた。

 言われた通り、優子ちゃんとお姉ちゃんの部屋の扉を開くとそこには……。

「な、なんだこれ?」

 広い畳の部屋には、布団が三つ並べられていた。
 一つは今仕事をしているお姉ちゃんのものだろう。だが、残された二つの布団は異常なほど密接に敷かれていた。
 しかも、枕元になぜかティッシュが置いてある。

 これは無事に帰れるのだろうか……?
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