不実な自由
私の最も強力なライバルが出現。弟の誕生だ。父と祖父が願ってはやまなかった長男である弟が私の五歳の誕生日をすぎて生まれてきた。私の記憶にはその喜んだり二人の顔はうかばないが、弟がうちへ帰ってきたときのことは何気なく覚えている。白いベビードレスに包まれ、弟は我が家のお坊ちゃまとして生活する日々の始まりだった。両親は弟のいいなり、父と祖父はまた弟をめぐって争いがエスカレートしていった。父が自分の父である祖父の事をすごく嫌っていた。私にはなぜだかわからなかった。父の影響で弟までが祖父を嫌うような育ち方をしてしまった。私や妹の時とは違い父親は弟を決して離そうとはしなかった。そして、祖父のことも悪く教えていた。私達の幼稚園の遠足にはすべて祖父が参加していたにもかかわらず、弟にはいつも母が参加していた。
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