妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~
「ちょっと待っててね」

 私がお札を取り出し貼り付けようとすると、黒いモヤから不気味な声が響いてきた。

「ジャマヲ……スルナ……」

 これは……蛇!?

 私は慌てて手を引っこめた。

 黒いモヤは蛇の形になり、牙をむいて私に襲いかかってきた。

「シャアッ!」

 襲いかかろうとする黒い蛇。

 私はそれを後ろに飛んで避けた。

「――散!」

 私が印を結ぶと、凪季の周りにまとわりついていた蛇が黒い霧になって散る。

 ふう……。

 私は額に浮いた汗をぬぐった。

「凪季っ、大丈夫!?」

 凪季の体を懸命にゆする。

 凪季は苦しげな顔をしながらも薄く目を開けた。

「……朱里?」

「凪季っ……凪季、大丈夫?」

 私の問いかけに、凪季は苦しそうな顔をしながらもうなずいた。

「ああ、大丈夫だ。朱里のお札が守ってくれたから」

 よく見ると、凪季のカバンに入っているお札が赤く光ってる。

「そう、良かった」

 狐の力が凪季を守ってくれたんだ。

「――ちっ」

 私がホッとしていると、どこからか舌打ちが聞こえてきた。

「竜くん!」

 私は舌打ちの聞こえてきた方向をキッとにらんだ。

 暗がりから音もなく竜くんが現れる。

「ちっ、朱里ちゃん、良いところだったのに何でそいつを助けるんだよ」
 
 こちらを鋭い視線でにらんでくる竜くん。
 
 その瞳は憎悪に染まっている。

 私はキッと竜くんをにらみ返した。

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