妖狐少女と御曹司～最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?～

２３．最強の妖狐

「竜くんこそ、どうしてこんなことするの!?」

　竜くんは、私の視線を軽々とかわし、フンと鼻を鳴らした。

「どうしてって、お前、蒼木家のことを知らねーのか？」

「し、知ってるよ。蒼木家って――この学園の理事長の家で、日本を代表する大企業の蒼木グループでしょ？」

　私が答えると、竜くんは眉をひそめて首を横に振った。

「それだけじゃねーよ。蒼木家は元々は陰陽師の家系だったんだよ。日本各地の妖怪を封印して多額の金を稼ぎ、そのお金を元にビジネスを始めたのが蒼木家のルーツってわけ。まあ、そこにいる坊ちゃんはだいぶ霊力も弱くて妖怪退治もできないみたいだがな」

「そ、そうなの？」

「ああ。俺の先祖の大蛇の妖怪も、こいつの先祖によって封印されたんだ。朱里ちゃんの先祖にあたる妖狐もそうだ。だからその借りを返してやらねーと」

　まさか……凪季のご先祖様が、私たちのご先祖様を封印した陰陽師だっただなんて……！

「でもそれは、ご先祖様どうしの話でしょ？　凪季や竜くんには関係ないじゃない」

「関係あるさ。『俺』の願いは陰陽師を末代までたたってやること。そしてこいつがその末代になるってワケ」

　長い舌をのぞかせながら、クククと笑みを浮かべる竜くん。

　その声は、ぞっとするほど低い。まるで人間じゃないみたい。

「『こいつ』がたまたま庭の隅で忘れ去られていた『俺』の封印石を割って封印を解いてくれて助かったぜ。そのおかげで、時を超えてこうして復讐できるんだからな」

　低く笑い続ける竜くん。

　もしかして竜くん、「ご先祖様」に体を乗っ取られてるの――!?

　私は大きく手を広げて凪季の前に立ちふさがった。

「凪季に近づかないで！」

　竜くんは薄ら笑いを浮かべると私に右手を差し出してくる。

「なあ、そんな奴は放っておいて俺らで手をくもうぜ？　同じ妖怪同士……さ」