妖狐少女と御曹司～最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?～

「あんた、メガネケースにも入れないで壊れたらどうするの。特注なのよ、それ」

「ご、ごめんなさい。急だったから――」

　私の答えに、お母さんの目がキラリと光る。

「急って？　まさかあなた、学校帰りに力を使ったんじゃないわよね」

「え……えっと、それは……実は学校の近くで変な妖怪(あやかし)が出て」

　私はしどろもどろになりながら説明をした。

　お母さんは腰に手を当て大きなため息をつく。

「ダメでしょ、そういう時は一度家に帰ってお母さんを呼んでちょうだい。他の人にあなたの力がバレたらどうするの？」

「ご、ごめんなさい……」

　もうバレてるけど……。

　少しびっくりした顔で私を見つめる蒼木先輩の姿が頭の中にちらつく。

　そういえば、あの時は逃げるのに必死で、私の力のこと、蒼木先輩に口止めするのを忘れちゃってたっ……！

　顔からさあっと血の気が引く。

　どうしよう。

　蒼木先輩が他の人に言いふらしたりなんかしたら……。

　ううん。

　先輩は私みたいな地味な女子のことなんか名前も知らないはず。

　だから妙な力を持つ女子に助けられたってウワサが広まっても、それが私だってことは絶対に分からない……と思う！

　私は首を振ってイヤな考えを打ち消した。

　今はとりあえずお店のお手伝いに集中しよっと。

　私は気を取り直してお店のエプロンに着替えた。