妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~

「それより行こう」

 蒼木先輩が自然なしぐさで私の手をぎゅ、とにぎる。

 とくん。

 心臓が小さく鳴って、胸がじんと熱くなった。

 彼女のフリをしなくちゃいけないから、手をつなぐのは当たり前。

 蒼木先輩にとってはきっと何てことないことなんだろうけど――。

 私はチラリと先輩の顔を見た。

 先輩の横顔は嘘みたいに整ってて、思わず見とれちゃうくらいにキレイ。

 こんな人と手をつないだら、女の子だったら誰だってドキドキするに決まってるよ。
 
 ……っていけないいけない。

 私はあくまでニセの彼女で、本当はボディーガード。

 蒼木先輩のこと、守らなきゃいけないんだ。 私は辺りをきょろきょろ見回し、怪しい人がいないか警戒した。

「……どうした?」

 蒼木先輩がキョトンとした顔で私を見てくる。

「い、いえっ、蒼木先輩がまた誰かに襲われたら大変だなって思って……」

 私が言うと、蒼木先輩はクスリと笑った。

「こんな休日に襲ってくる人はいないって」

 ……そうかなあ。

 人は襲ってこないかもしれないけど、妖怪は襲ってくるかもしれない。

 気を付けるに越したことはないのに。

 
< 62 / 112 >

この作品をシェア

pagetop