妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~
「それより行こう」
蒼木先輩が自然なしぐさで私の手をぎゅ、とにぎる。
とくん。
心臓が小さく鳴って、胸がじんと熱くなった。
彼女のフリをしなくちゃいけないから、手をつなぐのは当たり前。
蒼木先輩にとってはきっと何てことないことなんだろうけど――。
私はチラリと先輩の顔を見た。
先輩の横顔は嘘みたいに整ってて、思わず見とれちゃうくらいにキレイ。
こんな人と手をつないだら、女の子だったら誰だってドキドキするに決まってるよ。
……っていけないいけない。
私はあくまでニセの彼女で、本当はボディーガード。
蒼木先輩のこと、守らなきゃいけないんだ。 私は辺りをきょろきょろ見回し、怪しい人がいないか警戒した。
「……どうした?」
蒼木先輩がキョトンとした顔で私を見てくる。
「い、いえっ、蒼木先輩がまた誰かに襲われたら大変だなって思って……」
私が言うと、蒼木先輩はクスリと笑った。
「こんな休日に襲ってくる人はいないって」
……そうかなあ。
人は襲ってこないかもしれないけど、妖怪は襲ってくるかもしれない。
気を付けるに越したことはないのに。