妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~
 私が下を向いていると、凪季は静かな声で話し始めた。

「実は、俺も小さいころから少しだけ霊感があってさ。もちろん朱里ほどじゃないけど。たまに幽霊だとか妖怪だとか見えてた」

「えっ、そうだったんですか?」

 私はびっくりして凪季の顔を見た。

 まさか凪季にもそんな力があっただなんて。

 凪季は遠くを見つめ、語り始めた。

「うん。昔はそれで人にうとまれたりもした。『蒼木グループの後継者にふさわしくない』って陰口を叩かれたりもした。だから朱里の気持ちも少し分かる」

 凪季はギュッと私の両手を握る。

「でも……普通じゃなくても良いと俺は思う。みんなと同じでいる必要なんかない。俺はそのままの朱里が良いと思う」

「凪季……」

「だから、そんなに下を向くな。俺が付いてるんだから、しゃんと背筋を伸ばしてろ」

 まっ直ぐな凪季の瞳に、一等星みたいな強い光がきらめく。

 私は凪季の手の暖かさに、胸がじんと熱くなった。

 不思議だな。

 じんわりと勇気がわき上がって来るみたい。

「うん……」

 私は泣きそうになりながらうなずいた。

 ああ、私、やっぱりこの人が好きだ。

 凪季とずっと一緒にいたい。

 離れたくないよ――。
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