妖狐少女と御曹司~最強女子は御曹司くんのニセ彼女!?~

17.公園の黒い影

 空がほんのりと赤く染まり始める。時刻は夕方。

 私たちは、けやきの緑がきれいな公園を歩き、家への道のりを歩いていた。

 この公園をぬけたら、もうすぐ家に着く。

 やだな。帰りたくないな。

 そんなことを思っていると、凪季が優しく私の手を取る。

「朱里」

「は、はい」

 二人、手をつないで歩きだす。

 ドクン、ドクン。

 心臓の鼓動が止められない。

 ずっとこのまま、一緒にいられたらな。

 私は幸せを噛みしめながら落ち葉の舞う公園を歩いた。

 あまりにも幸せすぎて――気づくのに遅れてしまったんだ。

 私たちに、黒い影が近づいてきてるってことを。
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