心の声を聞きたい王子様に応える私は変態ですか?

1.変態はだ〜れ?

「セルバンティス様がお待ちです。部屋に入る前にこちらの砂糖菓子を口にお含みください。すぐに溶けます。そして、ご準備が整いましたら部屋にお入りください」
「ええ、ありがとう」

 これは、セルバンティス・バルゾーラ王子の婚約者を決める関門だ。

 彼は実は女性不信に陥っているという。そろそろ結婚相手を決めなければならないものの、女性に言い寄られても金目当てや王妃という肩書き目当てでしかないように思ってしまうらしい。

 彼は真実の愛を求めて、貴族の女性にハードルを課した。

 ――特定の相手に一定時間心を読まれる特別な砂糖菓子を手配いたしました。考えていることが全て筒抜けにはなりますが、ご覚悟のある方のみぜひお越しください。

 という内容だ。

 そんな食べ物があるのかというのは、かなり疑問だ。もしあったとして互いに食べ合えば「そんなこと考えてたの」「お前こそ」とそれはそれはカオスなことになりそうでもある。

 でも、王子様が手配できたと言っているからにはあったのだろう。

 この関門はセルバンティス様と結婚したい女性を尻込みさせたらしく……婚約者決めレースに臨んだ人はほとんどいないとか。考えてみれば当然だ。お金目当てなんだと思われたら、逆に家名を落とすことになる。金目当てに王子に取り入ろうとする娘がいる家だと思われてしまう。

 だから、子爵家の私にもチャンスがある。本気でセルバンティス様を好きになった私なら――!


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