俺の彼女は高校教師
 「いいか。 今日はオリエンテーションだ。 部活の話も有るからしっかり聞いとけよ。」 「いっつもしっかり聞いてます。」
「中村、お前はいつも忘れるだろう? 何処がしっかりなんだ?」 「先生も趣味悪いなあ。」
「俺の趣味が良かったら今林はこんな高校に居ないよなあ。」 「超絶大賛成!」
 「冗談はいいから3年生らしくちゃんとしろ。」 「ワーイ、やられてやんの。」
 いつものように賑やかな同級生たちと一緒にまたまた講堂へ、、、。 まずは部活紹介から、、、。
 水泳部、文学部、放送部、陸上部、野球部、バスケ部、バレー部、生花部、茶道部、バドミントン部、、、。
取り敢えず10個はクラブが有るんだ。 俺はもちろん帰宅部だけどね。
 キャプテンはみんな3年生。 それぞれにアピールポイントを並べて紹介し合ってます。 速く終わらないかなあ?
その後で顧問が発表されました。 それを聞いてびっくり。
なんとまあ美和先生がバレー部の顧問だって。 大丈夫なのかなあ?
 「おいおい、高橋先生 バレー部なんだって。 大丈夫なのかな?」 寺山正彦が聞いてきた。
「さあねえ。 あのバレー部は冴えないやつが多いからいいんじゃないの?」 「誰が冴えないってよ?」
「うわ、お化け。」 渕上智香が俺に詰め寄ってきた。
 「誰が冴えないの? 教えてもらおうじゃない。」 「こいつ、角生やしてら、、、。」
「そりゃあ怒るわよ。 天下のバレー部を侮辱されたんですから。」 「侮辱なんてしてねえよ。」
「冴えないやつだって言ってたじゃない。 どういうことなのよ?」 「おやおや、お二人さん 仲良しだねえ。」
 倉島満が俺たちを見て笑っている。 「ほらほら、あんなのにカップル呼ばわりされちゃって、、、。」
「ああもう、逃げないでよ! まったくもう、、、。」 やれやれ、廊下で喧嘩なんてしたくないぜ。

 さてさて部活の話がやっと終わって俺たちは教科書を貰って教室に戻ってきた。
(今年の注目は数学だなあ。 なあ、弘明。」 「そうか?」
「何だよ お前、あれだけ美和先生に見入っておいて、、、。」 「あはは、ちょっと気になっただけだよ。」
「怪しいなあ。 お前実は惚れてましたってやつじゃないのか?」 「何だよ それ?」
 そこへ久保山先生が入ってきた。 「はいはい、帰る前のホームルームをやるぞ。」
みんなは教科書の山を見ながら複雑な顔をしている。 (今年は最終学年なんだからそれなりに過ごすように。」
「先生、それなりにってどういうこと?」 「それなりにってことはそういうことだ。」
 「だからさあ、どういうこと?」 「うるさいなあ。 自分で考えろ。」
徳山久はいつもこうなんだ。 何かと噛み付いてうとましがられるうざいやつ。
 律子たちは帰りの計画を話し合っている。 またまた寄り道する気なんだなあ。
寮組の連中は進学コース。 だからかな、早速教科書を開いて中身を確かめてる。
 特に居村楓は難関狙いのお嬢様だ。 その顔が怖い。
教科書を1行ずつ睨みつけるように読んでいる。 (今からあれじゃあ誰も寄り付かないなあ。)
小学生の時から東大か京大を狙ってたって友達が言ってたっけ。 そこまでして勉強する価値が有るのか?
「よし。 ホームルームは終わった。 事故の無いように帰るんだぞ。」 久保山先生はドアを閉めて帰っていった。
 校舎を出たのは昼過ぎ。 どっかのコンビニでも寄ろうかな。
律子たちは相変わらず俺の後ろで話し続けている。 中学からずっと変わらないなあ あいつら。
 バス通りを左に曲がると駅へ向かうんだけど腹も減ってるしコンビニに寄ろうっと。 「ねえねえ、弘明君は何処に行くの?」
「腹が減ったからパンでも買おうかって。」 「じゃあ、あたしらも一緒に行くねえ。」
「うわ、こいつらが付いてきた。」 「何ヨ こいつらって?」
「いいじゃんか。 こいつでもどいつでも。」 「ひどーーーい。 昔からの彼女にこいつだって。」
「誰が彼女なんだよ?」 「え? 好きなの知ってて虐めるんだもんなあ。 趣味悪いよ。」
「香澄 いつから彼女だったの?」 「ずーーーーっと前からよ。 でもね、ぜんぜん気付いてくれないの。」
「片思いか。 寂しいなあ。」 「うわーー、肩 重い。」
「弘明君 誰も聞いてないわよ。」 「お前聞いてただろう?」
「聞いてない。 聞いてないってば。」 「じゃあ、俺が何て言ったか言ってみな。」
「肩 重い。」 「聞いてるやんか。 しっかりと。」
 「虐めないの。 可哀そうでしょう?」 「まあ、そういうことにしてやるよ。」
「そういうこと、、、、、、、、、か。」 「何だよ?」
「女子を虐める悪い人。」 「だから何だよ? はい、クロワッサン。」
 「あ、ありがとう。」 「現金なやつだなあ。」
「何よ たまにはいいじゃない。」 「たまには? いつもじゃないのか?」
 「それこそひどーーーーい。 訴えてやるーーーーー。」 「どうぞ ご自由に。」
「冷たいのねえ。 弘明君って。」 「そういう俺が好きなんだろう?」
「でででででも、、、、。」 「しょうがねえmなんだからなあ お前は。」

 コンビニを出た俺たちは駅へ向かって歩き始めた。 バス組の連中はもうバス停に行ってしまって誰も残ってない。
律子と香澄はいつものように喋りながら俺の後ろを付いてくる。 4月の風はまだまだ肌寒い。
 陸上部もバレー部も来週から動き始める。 夏には大会が待ってるからな。 それが終われば3年生は引退だ。
俺はというと特に進学する予定も無く、それだけの頭も無く、おそらくは秋から就職の話が動き出すはず。
そろそろ目星くらいは付けておかないとな、、、。 ぼんやりと考えていたら駅に着いてしまった。
 「じゃあまたね。 明日もよろしく!」 そう言って律子が反対のホームへ走って行く。 香澄はいつものようにスマホを取り出した。
ホームの端っこには自販機が置いてある。 そこに何人かの中学生が群がっている。
 他に乗客は居ないらしい。 まあ昼なんだから当然と言えば当然だな。
電車が入ってきてホームに戯れていた人たちを飲み込んで行った。 「はーあ、また暇な時間が訪れそうだな。」
 香澄はスマホと睨めっこしながらブツブツ言っている。 (あいつ、何やってんだろう?)
 大して覗く気も無いが漏れてくる話を聞いていると、どうやらゲームをやっているらしい。 (飽きないやつだなあ まったく。)
つい数日前にも負けたのやられたのって悔しそうな愚痴を嫌というほど聞かされたばかりだから。
 飽きないやつは本当に飽きない。 去年なんて授業中に見てるのがばれて没収されたのに、、、。
ガタンゴトン レールの響きはいつもと変わらず、陽だまりの中で俺は眠くなってしまった。 どれくらい寝ていたんだろう?
 「お客さん 終点ですよ。」 誰かが声を掛けてくる。
「え?」 その声にぼんやりと目を覚ました俺は辺りを見回してブルーになっちまった。 終点 河原田駅である。
そうだそうだ。 今日の電車は永吉橋行きじゃなかったんだ。
 いつもの駅からは1時間ほど南に来た所である。 俺はガックリして反対側のホームに出て行った。
ということは家に帰りつくのは3時半を過ぎた頃だ。 ああ、やっちまった。
 またまた電車に乗って揺られているとスマホが鳴った。 「弘明 帰ったか?」
「いや、すっかり寝過ごして河原田まで来ちゃったんだよ。」 「あらまあ、そんな所にまで?」
「そんで今さ、天塩川行きの急行に乗ったから。」 「今度は寝過ごすんじゃないよ。 天塩川までは迎えに行けないからね。」
「分かった分かった。」 そう言ってスマホを切ると俺は窓の外に目をやった。
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