さかなの眼
「あーこれ、やばい?もしかして」
河合君が土のついたキャンパスを
覗き込んで渋い顔をした。

松刈中学校の目玉とも言える桜の並木道。
校庭に沿って曲がった並木道は
遠くまで美しい桜が顔を覗かせる
美術部の私は薄桃の並木道を描きたくて
キャンパスをここで広げていた。
そのキャンパスに土がついてしまった。

「美術室で直してみるから、大丈夫だよ」
私は赤い顔が恥ずかしすぎて
河合君から早く離れようと
美術室に戻ろうとした。

「そっか。美術室に持って行くの手伝うよ」
そう言って河合君が
キャンパスとイーゼルを持ってくれた。
河合君に続いて私も校舎に入った。

さっきまでは顔が暑かったけど
後ろ姿は意外に大丈夫なんだな
でもおおきい背中だなと
河合君の野球部のユニホーム姿の背中を
まじまじと見ていた。

「美術室ってどこだっけ?」


河合君がのぞみの方に振り返った。
周りを見ると、美術室に続く校舎じゃない。
「え、ここどこ?」
私は河合君の後ろ姿に見入っていて
どこを歩いているか気付いていなかった。

「え?何?城咲って美術部だよね?」
「え、だって」
慌てふためいていると
河合君が噴き出して「美術部なのに」
と、お腹を抱えて笑っている。
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