七宝 ‐なほ‐
世羅が帰宅すると、

「なんで今更本当の事を言わなければならないわけ!?」

母親・波音(なみね)のヒステリックな声が聞こえた。
続いて、

「ずっと黙ったままでいるの?
何も知らないまま育つせーらーが可哀想と思わないのか!」

父親・康弘(やすひろ)の声が聞こえた。

2人が言い争うなんて珍しい。
世羅は喧嘩の仲裁に入る為、居間に向かう。

「だって、わたしはせーらーをずっと自分の本当の子どものように育ててきたわけさぁ」

波音の言葉に、世羅は思わず持っていた鞄を落としてしまう。

波音が物音に気付き、居間の扉を開けると、

「なにそれ…」

顔面蒼白な世羅が立っていた。

「聞かれたなら仕方がない」

康弘はそう言いながらもどこか嬉しそうで、反対に波音は憂鬱な表情を浮かべていた…。
< 8 / 70 >

この作品をシェア

pagetop