すれ違いだらけだった私たちが、最愛同士になれますか?~孤高のパイロットは不屈の溺愛でもう離さない~
テロップにも【この時、周りの乗客からは悲鳴や焦りの声が上がっていました。】とある。先週の不安な気持ちが蘇り、ドキドキしながらスマホの画面を見つめた。
『この先、多少揺れることがございますが、飛行機は片方のエンジンだけでも安全に飛べるよう設計されております。我々パイロットも、そうした想定の訓練を行ってまいりました。みなさまにはシートベルトの着用を今一度確認していただき、着陸に備えていただきますようお願い申し上げます』
穏やかな声音と落ち着いた口調の長嶋の言葉に安堵が広がり、自然と耳を傾けていく様子が画面越しにも伝わってくる。
長嶋には一度会ったことがあった。美咲がカランドの空港店にヘルプで入っていた時に、大翔が彼を伴って店にやってきたのだ。大翔いわく、サクラ航空の中でも一、二を争う優秀なパイロットらしい。
(操縦桿を握っていた大翔さんはもちろん、声だけで乗客の心を落ち着かせる長嶋キャプテンも本当にすごい)
そこで動画は終わりかと思いきや、再生時間は半分以上残ってる。不思議に思いつつもそのまま見ていると、再び長嶋の声が聞こえてきた。
『私の横で操縦桿を握る彼には、なんと八年越しに想いが通じた最愛の恋人がおります。孤高のパイロットとの異名を取っていた彼は、今や上司である私にも惚気てくるほど彼女に夢中な様子で、私はいつ結婚式のスピーチを頼まれてもいいよう心の準備を整えているところです』