すれ違いだらけだった私たちが、最愛同士になれますか?~孤高のパイロットは不屈の溺愛でもう離さない~

家事は分担制ではなく、その時にできる方がすればいいというスタンスで暮らしている。彼はこれまでもあまり自炊をしてこなかったらしく、今では料理をはじめほとんどの家事を美咲が担っている。

それを不満に思ったことはない。元々実家でしていたせいか家事は苦手ではないし、相手に求めるよりも自分でやってしまった方が早いし楽だと感じるためだ。

最近では仕事が忙しく、平日に夕食を作る機会も少なかった。久しぶりにふたりで食卓を囲み、ゆっくり話をしたい。

(それならせめてお酒くらい買ってくればよかったかな。せっかくの金曜日だし、足りなければあとで一緒にコンビニにでも行けばいっか)

当初の予定より二時間も早く帰宅できたことに、美咲は心が浮き立つのを感じる。鼻歌交じりに大きな通勤バッグから鍵を取り出し、玄関のドアを開ける。

「ただいま」

傘立てに濡れた傘を置くと、足元に見覚えのないパンプスが転がっているのに気がついた。黒い華奢なヒールは八センチはあろうかという高さで、美咲のものではない。

(えっ? 誰か来てる……?)

悠輔はふたつ離れた弟とふたり兄弟だと聞いているし、もしも母親や親戚が訪ねてきているのだとしたら、彼は美咲に連絡をしてくれるはずだ。

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