マリアンヌに私のすべてをあげる

恋をすると……


はぁ……最近かなり仕事量が増えてる。
どう考えても故意に増やされている。
ロマンスグレーセバスチャンめっ!!
ここんとこずっと執務室にこもりっきりにさせられてんじゃねぇか!!
ロマンスグレーセバスチャンは私を過労死させる気だな……

しかもめんどいことに女豹アドリアナが屋敷に来るとかエリザベス母ちゃんが言ってたなーー。
あの女……爽やかクリストファー改め、背筋凍らせクリストファーに相手されんかったことを私に逆恨みしてなければいいけど……
こんなストレスマッハな日はビール呑んで餃子食いて〜〜ぇ。
餃ビーに限るよな〜〜。
なんもありゃしねぇ!!

ーーコンコン、

『レオナルド様、アドリアナ様が客間でお待ちです』

もう来やがったのかっ!!息つく暇もないじゃんよ!!

『わかった。今行く』

毎度のことながら全然行きたかね〜〜
あ〜〜気ぃ重っ。


ラナと一緒に女豹アドリアナの待つ客間へ向かった。

今日も偉そうな態度で待ってんだろうなーー。

ーーコンコン、

『レオナルド様をお連れして参りました』

扉をラナに開けてもらい部屋へ入ると、こちらを見向きもせずにイスに座ったまま、窓の外を眺め黄昏れる女豹アドリアナ。

ーーなんだ?

珍しくし大人しいな……。
いつもなら顔合わすなり睨みきかせるか、あーーだこーーだ言ってくるはずなのに?
どうしたんだこの女……腑抜けてやがる。

『アドリアナ、何か話でもあるのか?』

『レオナルド…… あなたは恋をしたことある?』

はあ???
人の顔見るなり何言ってんだこの女……。

『こ、恋?』

『そう恋よ。クリストファー様…… 私に関心がないみたいなのよ。変だと思わない? 私に恋に落ちないだなんて……』

いやいや、アンタのその自信満々でグイグイくる感じにドン引いてんだろ。

『レオナルドはクリストファー様のことを昔からよく知っているでしょ。クリストファー様はどんな女性がお好みなの?』

ーークリストファーの好みの女……

そ、それは……もしかすると……マリアンヌなんじゃ……

『さぁどうなんだろう……』

『どなたか好きな方がいらっしゃるのかしら? 遊び人のレオナルドにはわからないでしょうけど…… 恋をするとね、その人のことをなんでも知りたくなるものなのよ』

恋をすると……なんでも知りたくなる……

ふーーーーん。
そんなふうに誰かを想ったことなんてないなっ。
私は互いに干渉せずにヤることヤったら、そのまま後腐れなくサヨナラして終わる関係しか持ったことないし。
意外とこの女も可愛いとこあんじゃんか。

『クリストファー様って…… 惚れ惚れするほど素敵なお方なのに…… 浮いた話を一度も聞いたことがないのよね。次期公爵ともあろう人が、いまだに婚約者もいないだなんておかしいわよ』

へーーぇ、そうなんだ……。
あんなにいつ見ても女連中に囲まれてんのに。
レオナルドにクリストファーの爪の垢でも煎じて飲ませてやりゃあ良かったじゃん!!

『私の美貌と色気をもってしても全く関心を示してもらえないだなんて…… 誰か想い人がいるんだわっ!! それも絶世の美女に違いないわよ!! でもね、私より美しい人なんて見たことないのよ。どこのご令嬢かしら?』

眼光をギラリとさせ不満げに口を尖らせる女豹アドリアナ。

やっぱ可愛いくねぇな。
自分の容姿の話になった途端に饒舌になりやがった。
まっ、そのほうが女豹アドリアナらしいけどっ。

『クリストファーに想い人がいてるかどうかなんて聞かれてもわからない……』

ーー想い人か……

『今度クリストファー様にお会いしたらそれとなく聞いてみてちょうだいよ!!』

またそんな面倒なことを……
私は確実に背筋凍らせクリストファーに嫌われてっからなーー。
この世から抹殺されそうな勢いでガン飛ばされてるしっ。

『ねぇ聞いてるのッ!! レオナルドッ!!』

はあぁ。
いつもの女豹アドリアナに戻ってんじゃん。この女もしおらしさとは無縁な女だな。
適当に相手しとこっ。

『会う機会があれば聞いておくよ』

『よろしくねッ!!』

クリストファーの想い人……実際気になるよな……その相手が誰なのか。

それにマリアンヌはどんな奴がタイプなんだろう……







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