隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい
背後から声がして、パッと振り向くと。
ひとりの男の子と目が合った。
レンズが少し分厚めの黒縁メガネをかけた彼は、背が高くて。サラサラの黒髪が風になびいている。
「もしかして、転校生?」
「はっ、はい。今日、転校してきたばかりで……」
「そっか。転校早々に遅刻だなんて、ちょっと可哀想だな。俺についてきて?」
「え?」
俺についてきてってって、いきなり何なの? この人。
見ず知らずの人に突然そんなことを言われた私は戸惑い、その場に立ち尽くしてしまう。
「ねぇ、早く! 君も反省文、書きたくないでしょ?」
「は、反省文?」
「ああ。遅刻したら、山ほど書かされんの。もし君がどうしても書きたいって言うのなら、無理について来なくても良いけどね」
唇の端を、くいっと上げる彼。
「は、反省文なんて、そんなの書きたくないですよ!」
逆に、反省文を書きたいっていう人なんてこの世にいるの?
「だったら、俺についてきて!」
大丈夫かな? でも、反省文は書きたくないし……。
「わ、分かった」
私は、いま会ったばかりの男の子について行くことにした。