隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい


「どうした? もしかして、飛び降りるのが怖いの?」

「こ、怖くなんか……」


『怖くなんかない』と言いかけて、私はふと思い出した。


──『男子って、守ってあげたくなるような女の子が好きらしいよ?』


この前ショッピングモールで話していた、いとこの風音ちゃんの言葉を。


幼い頃に、何度か木登りをして遊んだことだってあるし。


今まで空手や合気道で鍛えてたから、ここから飛び降りるくらい全然平気だけど……。


「そ、そりゃあ怖いよ。こんな高いところ、今まで登ったことないんだもん」


私はあえて、平気じゃないフリをすることにした。


「まじか。それじゃあ、俺が受け止めてやるよ」


そう言って、下にいるメガネの男の子は腕を広げる。


もしかして、あそこに飛び込めってことかな?


「大丈夫。俺が絶対に受け止めるから」


彼の目が、真っ直ぐ私を見つめる。


「怖がらずに、俺のところに来いよ」

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