隠れ御曹司は、最強女子を溺愛したい
そんなことを思ってると、彼が慌てたようにスマホを取り出し時間を確認した。
「やばい、時間が……急ごう!」
「わ、分かった」
遅刻をしたら、何のためにあそこから飛び降りたのか分からないもんね。
バタバタと走りながら、私よりも少し先を行く大きな背中に声をかける。
「あの……さっきは、本当にごめんなさい」
「ううん。俺が手を貸したくて、貸しただけだから。気にしないで?」
「ありがとう」
こんなふうに男の子と普通に話したのなんて、いつぶりだろう?
3月まで通っていた中学校では『男子よりも強い女子』と言われて、なぜか異様なくらいに怖がられていたから。
久しぶりに男の子と話して、親切にしてもらえて感動。
「そういえば君、名前何だっけ?」
「……は、羽生菜乃花です」
「俺は、宇山 彗。よろしく、羽生さん」
宇山……彗くん。
さっき素顔を知ったからか、彼の笑顔が一段とキラキラ輝いて見える。
「うん。こちらこそよろしくね!」
宇山くんみたいな男の子もいるんだって思ったら、これからの学校生活が楽しみになった。