メロンパン仮面様の正体は
1.メロンパン仮面様
妖怪の頂点であり彼らに力を与え世に混沌をもたらした黒魔目は倒され、世には平和が戻った。
しかし、全ての妖怪が死に絶えたわけではない。ひっそりと忍び、人々に混乱をもたらそうとする。
――だが、そんな時はいつだってどこからともなく彼がやってくるのだ。
『かりかりするのならカリカリのメロンパンを食べればいい』
ナレーションのような声が煙幕の中より響く。
『外はサクサク、中はふわふわ。その味は全ての苦しみを忘れさせ、お前たちを天国へと誘ってくれるだろう』
煙幕と周囲に響くイケボに人々が集まってくる。
「メロンパン仮面様よ!」
「メロンパン仮面様が来たんだわ!」
「メロンパン神様ー!」
網目模様が特徴のふっくらふわふわ空飛ぶメロンパンカーに乗って颯爽と現れたのは、緑の縁取りがされた仮面をつけ、つばの大きいメロンパンを模した帽子をかぶり、網目模様の緑の全身タイツで胸元に『メロンパン命』と大きく書かれた姿のメロンパン神の化身、メロンパン仮面様だ。
「メロンパンを愛する正義のヒーロー、メロンパン仮面参上!」
仮面から覗くクールな緑の瞳は人々を魅了する。
「お前……天邪鬼に取り憑かれているぞ」
「ええ!?」
メロンパンカーから降りてメロンパン仮面様が話しかけたのは、女子中学生だ。さっきまで隣にいる男子中学生と喧嘩をしていた。
「お前が素直になれないのはそこの天邪鬼のせいだ」
彼が指をさすと、その姿が現れた。小さな男の子だけれど赤いツノが生えている。
「ふん。オレがメロンパンなんかに――、」
「メロンパンビーム!」
メロンパン仮面様が両手で丸の形を作ると、甘い匂いとあの独特の薄い黄色の光と共にそこから大量のメロンパンが天邪鬼の口に向かって放出された。子供相手に容赦がない。
「ふぐぅっ……っ、ん、んぐぅ、これ、ビームじゃねぇ……っ!」
「メロンパンスプラッシュ!」
今度はメロンパン仮面様の瞳がその色に光り、背後から大量のメロンパンが飛んでいき天邪鬼を押し潰そうとする。
「うがっ、重いっ……!」
「メロンパンに沈め」
彼の体はメロンパンの海に沈み、そうして大量のメロンパンと共に浄化される。どこかその表情は幸せそうでもある。
「……ふん。今回はジャイアントメロンパン神になるまでもなかったな」
その芳しい匂いは人々を恍惚とさせる。
「ありがとう、メロンパン仮面様!」
「メロンパン神様、万歳!」
メーロン!
メーロン!
パソッカ!
パソッカ!
祝福の言葉を浴びながら、彼はまた白い煙幕の中へと立ち去って行く。なぜか混じっているお菓子の名前は、最近殺妖隊により発行された「メロンパン仮面様大全」の彼の好物欄に載っていたものだ。妖怪に付け入る隙を与えたくなければ、美味しい食べ物の名を唱えるとよいと書かれていたのを受けての掛け声である。謎に満ちた彼の生態はその本でも明らかになっていない。
「メロンパンを食べよ。さすれば妖に惑わされることはなかろう。美味しいメロンパンで満腹になった心は妖を退けることだろう。さらばだ!」
彼の姿は跡形もなく消えた。
――煙幕を張り、メロンパンカーを運転するのは誰なのか……人々はなぜかそこに関心が向かない。
全てはメロンパン神様のお導きだ。
しかし、全ての妖怪が死に絶えたわけではない。ひっそりと忍び、人々に混乱をもたらそうとする。
――だが、そんな時はいつだってどこからともなく彼がやってくるのだ。
『かりかりするのならカリカリのメロンパンを食べればいい』
ナレーションのような声が煙幕の中より響く。
『外はサクサク、中はふわふわ。その味は全ての苦しみを忘れさせ、お前たちを天国へと誘ってくれるだろう』
煙幕と周囲に響くイケボに人々が集まってくる。
「メロンパン仮面様よ!」
「メロンパン仮面様が来たんだわ!」
「メロンパン神様ー!」
網目模様が特徴のふっくらふわふわ空飛ぶメロンパンカーに乗って颯爽と現れたのは、緑の縁取りがされた仮面をつけ、つばの大きいメロンパンを模した帽子をかぶり、網目模様の緑の全身タイツで胸元に『メロンパン命』と大きく書かれた姿のメロンパン神の化身、メロンパン仮面様だ。
「メロンパンを愛する正義のヒーロー、メロンパン仮面参上!」
仮面から覗くクールな緑の瞳は人々を魅了する。
「お前……天邪鬼に取り憑かれているぞ」
「ええ!?」
メロンパンカーから降りてメロンパン仮面様が話しかけたのは、女子中学生だ。さっきまで隣にいる男子中学生と喧嘩をしていた。
「お前が素直になれないのはそこの天邪鬼のせいだ」
彼が指をさすと、その姿が現れた。小さな男の子だけれど赤いツノが生えている。
「ふん。オレがメロンパンなんかに――、」
「メロンパンビーム!」
メロンパン仮面様が両手で丸の形を作ると、甘い匂いとあの独特の薄い黄色の光と共にそこから大量のメロンパンが天邪鬼の口に向かって放出された。子供相手に容赦がない。
「ふぐぅっ……っ、ん、んぐぅ、これ、ビームじゃねぇ……っ!」
「メロンパンスプラッシュ!」
今度はメロンパン仮面様の瞳がその色に光り、背後から大量のメロンパンが飛んでいき天邪鬼を押し潰そうとする。
「うがっ、重いっ……!」
「メロンパンに沈め」
彼の体はメロンパンの海に沈み、そうして大量のメロンパンと共に浄化される。どこかその表情は幸せそうでもある。
「……ふん。今回はジャイアントメロンパン神になるまでもなかったな」
その芳しい匂いは人々を恍惚とさせる。
「ありがとう、メロンパン仮面様!」
「メロンパン神様、万歳!」
メーロン!
メーロン!
パソッカ!
パソッカ!
祝福の言葉を浴びながら、彼はまた白い煙幕の中へと立ち去って行く。なぜか混じっているお菓子の名前は、最近殺妖隊により発行された「メロンパン仮面様大全」の彼の好物欄に載っていたものだ。妖怪に付け入る隙を与えたくなければ、美味しい食べ物の名を唱えるとよいと書かれていたのを受けての掛け声である。謎に満ちた彼の生態はその本でも明らかになっていない。
「メロンパンを食べよ。さすれば妖に惑わされることはなかろう。美味しいメロンパンで満腹になった心は妖を退けることだろう。さらばだ!」
彼の姿は跡形もなく消えた。
――煙幕を張り、メロンパンカーを運転するのは誰なのか……人々はなぜかそこに関心が向かない。
全てはメロンパン神様のお導きだ。
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