運命の相手はどこにいる?

1.主人公視点

「なぁなぁ〜、俺と付き合ってよ。恋人のいない高校生活なんて寂しいじゃん?」
「あんたと付き合うなんて選択肢はないから安心しなさいよ」
「えー、冷たいな。俺と付き合ったらさ、きっと楽しいこといっぱいあるぜ?」
「楽しいことってなによ。付き合わないけど聞いてあげるわ」

 クラスメイトの坂口彩夏が、つまらなそうに隣に座る俺との会話に付き合ってくれる。もうすぐ授業が始まるので仕方なくだろう。中学から一緒なのはこのクラスでは彩夏だけだ。

「俺とデートできる!」
「全然いらない。楽しくない」
「決めつけるなよ!」
「他の子に目を向けなさい……って言いたいけど、誰にとってもいい迷惑よね」
「ひでーよ! でもそうなんだよ、こんなの頼めるの彩夏しかいねーんだよ。俺と付き合おうぜ〜。恋人のいる楽しい高校生活を一緒にさぁ」
「そんなんだから女の子が寄り付かないんでしょ。下心ありすぎよ」
「だから彩夏に頼んでんだよ。あ〜やかってば〜」
「うざ」

 恋人のいる高校生活を送りたいだけなのに。

 彩夏は気が強いし、軽く話す男子はいるけど特別な相手がいるふうでもない。だから気楽に頼めるんだけど、全然俺に気がないんだよなぁ。

「うざすぎるから、あんたの運命の相手を占ってあげるわ」
「は!? 彩夏、そんなんできるのか!?」
「しつこいから、あんた。ちょっと目をつむってて」
「おーよ!」

 まさか彩夏が占いなんてできるとはな! うーん、文化祭は彩夏の占いコーナーとかでいいんじゃねーか?

 ん? なんだか今ボソッと「スロットメーカーポチッとな」なんて声が聞こえた気がしたが!?

「目を開けていいわよ」
「お、おう」

 今、スマホをしまったよな?

「神の導きの声が聞こえたわ」
「なんだと」

 こえーよ!

「あんたの運命のキーワードは『土産』と『呼び出し』と『水たまり』よ。それが交わる場所に、運命の相手が現れるわ。まぁせいぜい頑張れば」
「な!? それって――」
「授業始めるぞー、席につけー」

 なんてタイミングで先生が来やがるんだ。

 彩夏は晴れやかな笑顔を俺に向けるだけだ。これ以上、何かを言うつもりはなさそうだ。

 ――よし、頑張るか!

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