求婚は突然に…       孤独なピアニストの執着愛
目が覚めても、やはり現実は変わりなく厳しくて、それでも動き出さなくちゃ何も始まらない。

重たい身体を無理やり持ち上げ、冷蔵庫の中を確認する。

何が食べなきゃと思うけど、食べたい意欲はなかなか湧いて来ない。

ああ…昨日仕事帰りに買った新発売のスイーツがある。これでも食べて、部屋探しに行かなくちゃ…。

コンビニの新作スイーツは、小さなパフェのような作りになっていて、プリンやスポンジケーキ色鮮やかな果物が入っていた。

美味しい…。
甘いものを食べている時だけは一瞬現実逃避が出来る。

小さな幸せに浸りながら、スマホを片手にアパートの検索をする。
家賃は…4万くらい。コンビニまで自転車で30分なら行けそうかな…。

築20年 木造アパート 1DK リフォーム済み。敷金礼金無し。家賃4.5万円。

このくらいなら何とかなりそう…。
このさえ古さもセキュリティも二の次だと、諦める事にした。

こんな根暗な冴えない女に誰も寄って来る事はないだろうし…。

それから何件か閲覧して、早速不動産屋に電話する。内覧をお願いすると、今日はあいにく人が出払っていると言う事で、3日後に改めて行く事になった。

もう、今日は何もしたくない。
不動産屋に電話するだけで、今日1日のパワーを使い切ってしまった。

そう思い、ベッドに戻ってゴロンと寝転ぶ。

洗濯カゴには溜まった洗い物…冷蔵庫の中も空っぽで…やるべき事も、やらなきゃ行けない事も全て手放して布団を被り、現実から逃避する。

結局夕方起き出して、慌てて洗濯をして食材を買いに行く。
今日も資格の勉強が出来なかったな…。
大学で経済学を学んでいたから、経理士の資格でも取ろうと、会社の支援制度を使って入社当初から通信講座を始めていた。

退職後、そのまま残ったやりかけのテキストや教科書を、また引っ張り出して1ヶ月前からまた勉強を再開した。

また、社会復帰したいと思う気持ちと、もう、どうせ無理だと思う気持ちが毎日責めぎ合う。

自分が今、どこに向かっているのか、何の為に生きているのか分からない毎日を何となく生きている。
< 9 / 113 >

この作品をシェア

pagetop