求婚は突然に…       孤独なピアニストの執着愛
結局、滑りやすい雪道を歩いて、家に着いたのは9時を少し回っていた。

私は朝ご飯を食べる気力も無く、バタンとベッドに倒れ込む。
私の住むマンションは駅から徒歩10分。築3年の3階角部屋。オートロックに、風呂トイレが別。1LDKのとても優良物件だ。

大手商社に入社した時に入居した。家賃12万…。
会社の援助が8万も有り、初給料も良かったから、当時はなんの痛手にもならなかったのだが…。
フリーターになった今、少ない退職金を削って、この部屋を維持して行くのは難しい。

どうにかしなくては…安くて今のコンビニからも近い場所で…多少の治安の悪さはこのさえ気にしてられない。

ベッドの上で転がりながら、思考は悪い方へ悪い方へと傾いて行く。

家賃が払えなくなったら…実家に帰るしかない…。私を大学に出す為に、一生懸命働いて支えてくれた両親に合わす顔が無い…。

その気持ちだけが今の私の原動力だった。

何も無い田舎からやって来た大都会で、結局何も成せないまま、実家に逃げ帰るなんて…。涙がポロポロと溢れ出す。

こんなんじゃダメだ…。この社会から弾き出された私は社会不適合者…。
このまま目が覚めなければいいな…と思いながらいつの間にか眠りについた。
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