崖っぷち漫画家はエリート弁護士の溺愛に気付かない

2.これが、私なのだから⑦

 どれくらい時間がたったのだろうか。
 ふと人が室内へ入ってきた気配に気付きうっすらと目を開く。
(高尚仕事終わったんだ)
 うとうととしながらベッドの中へ静かに潜り込もうとしているのを感じ、彼の方へと寝返りを打つようにごろんと転がった。

「お疲れ様」
「悪い、起こしたか」
「んーん、大丈夫」
「目も開いてないのに大丈夫もなんもねぇだろ」
「薄くだけど開いてるもん」
「それ寝てるっつーんだよ」
 目蓋が重くて本当は閉じながらそう返事すると、ふはっと小さく笑い声が聞こえた。
 
 そのまま横になった高尚へすがり付くように体を寄せると、私の首下へ腕を通し抱き寄せられる。
 お風呂上がりなのか、ホカホカとした彼の体が心地よくて再び微睡んでいると、ちゅ、と額に口づけられた。

「おやすみ」
「ん、おやすみ……」
 この穏やかな時間に幸福感を覚えつつ眠りに落ちる。

 そして次に目覚めた時は、腹部を撫でられていると気付いた時だった。

「?」
 いつの間にか寝返りを打っていたのだろう。
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