怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する
「そうですけど……そんなに、分かるものなんですか?」
どんな反応が返ってくるかと身構えたが、意外にも優流は不思議そうに首を傾げた。可も不可もなく、な反応に、私は内心安堵する。何とか、会話は繋がりそうだ。
「はい、やっぱり既製品のスーツですと、自分に合わせたサイズを選べても、百パーセントぴったりにはならないので。歩く姿もとても綺麗なので、そう思ったんです」
実際、歩いていても優流のスーツにかっこ悪い皺が寄ることはなく、どことなく洗練して見える。彼の厚い胸板にも、ジャケットの生地はぴっちりと沿っていた。
百貨店という場所柄、高価なスーツを着た男性のお客様を見かけることも多いが、優流もそれに近いと感じたのだ。
「お詳しいですね」
「いえ……そんな。ちなみに、どこのお店でオーダーしたんですか?」
「町川の駅裏にある、スーツカトウというところですね」
「あ! そのお店、知ってます! 友達がそこで一着就活用のスーツを仕立ててもらったって言ってました」
知っている店の名前が出てきて、私は思わず驚きの声を上げた。
「リクルートスーツをオーダーするのは、珍しいですね」
「その子、身長が百七十センチぐらいあるんですけど、吊るしのスーツだと合うサイズがなかったみたいで……それで、カトウでオーダーしたらしいです」
「自分と同じような方もいるんですね」
「え?」
「恥ずかしながら、この図体だと服を探すのも一苦労で」
優流の身長は百八十センチ以上はありそうだ。それに、がっちりした体型なので、身体の厚みもある。
男性的で魅力的な身体つきだけれども、それはそれでデメリットがあるようだ。