怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する
「うーん、それはちょっと違うかも。お兄ちゃんは裁判官だけど、裁判長……裁判官の中でのトップではないから」
「え、裁判官の方って何人もいるんですか?」
私の頭の中では、裁判の法廷にいるのは弁護士と検察官、そして判決文を読み上げる裁判長ぐらいしか思い浮かばない。ドラマなどでも裁判のシーンを真剣に見ていた訳でもないので、うろ覚えなのだ。
「何か、裁判官イコール裁判長って思い込んでて……場が荒れた時に木槌を叩いて『静粛に!』って言ってるイメージなんです」
「あー、何となく分かるわ。私も、お兄ちゃんが裁判官になって色々知ったから。そう言われると、お兄ちゃんって裁判長の席に座ってそうだわ。あの顔が前にあったら、被告人も悪い態度取れなさそうだもん」
凛のひと言に思わず笑いそうになったものの、優流に申し訳ないので何とかギリギリ堪えた。
あれこれ話しているうちに、私たちはケーキを食べ終えていたのだった。
「そうだ。ねえ。高階さんって、来週の平日でどこか空いてる日ない?」
「来週だと、木曜日がお休みですけど……」
「良かったら、一緒に行ってみない? お兄ちゃんの職場」
「え……え!?」
私が思わず聞き返すと、凛はスマートフォンで裁判所のホームページを開きながら言った。
「よほど特殊な事件じゃない限り、裁判の傍聴は簡単にできるはずよ」
そんな流れで、私は凛とともに優流の職場ーー裁判所に行ってみることになったのである。
「え、裁判官の方って何人もいるんですか?」
私の頭の中では、裁判の法廷にいるのは弁護士と検察官、そして判決文を読み上げる裁判長ぐらいしか思い浮かばない。ドラマなどでも裁判のシーンを真剣に見ていた訳でもないので、うろ覚えなのだ。
「何か、裁判官イコール裁判長って思い込んでて……場が荒れた時に木槌を叩いて『静粛に!』って言ってるイメージなんです」
「あー、何となく分かるわ。私も、お兄ちゃんが裁判官になって色々知ったから。そう言われると、お兄ちゃんって裁判長の席に座ってそうだわ。あの顔が前にあったら、被告人も悪い態度取れなさそうだもん」
凛のひと言に思わず笑いそうになったものの、優流に申し訳ないので何とかギリギリ堪えた。
あれこれ話しているうちに、私たちはケーキを食べ終えていたのだった。
「そうだ。ねえ。高階さんって、来週の平日でどこか空いてる日ない?」
「来週だと、木曜日がお休みですけど……」
「良かったら、一緒に行ってみない? お兄ちゃんの職場」
「え……え!?」
私が思わず聞き返すと、凛はスマートフォンで裁判所のホームページを開きながら言った。
「よほど特殊な事件じゃない限り、裁判の傍聴は簡単にできるはずよ」
そんな流れで、私は凛とともに優流の職場ーー裁判所に行ってみることになったのである。