怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する
 そんな私を見て、今度は凛が吹き出した。

「ふふっ。もう、高階さんってば真面目なんだから」

「っ、すみません」

「大丈夫よ。えーっとね、じゃあお兄ちゃんのプロフィールから。御堂優流三十歳。八月十日生まれで、獅子座のA型よ。身長はたしか……百八十センチぐらいで、趣味は子供の頃から続けてる剣道、かしらね」

「なるほど……だから、あんなに姿勢が良いんですね」

 優流の背筋の伸びた後ろ姿を思い浮かべながら、私は呟いた。彼の洗練された動作も、おそらく自然と身についていったものなのだろう。

「まあ……姿勢が良いから余計に身長に身長が高く見えて、近寄り難さは倍増してるけどね。それで経歴は、大学在学中に司法試験を合格して、そのまま卒業後に裁判官になったって感じかしら」

「へえ……」

 法律関係には詳しくないが、司法試験がとても難しい試験であることぐらいは知っている。優流が優秀な人であることを改めて実感し、私はつい感嘆の声をあげた。

「裁判なんてドラマや映画のシーンぐらいでしか見たことがないですけど、御堂さんが判決文を読み上げてる姿は容易に思い浮かびますね」

 何気なく私がそう言うと、凛は小首を傾げた。
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