怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する
「お疲れ。初めての傍聴、どうだった?」

 裁判が終わり法廷から退室してから、凛は伸びをしながら言った。

「何と言うか、別世界って感じで新鮮でした」

「分かる。普通に生活してたら絶対に踏み込まない空間、って感じだったよね……って、びっくりした」

 見ると、優流が廊下を歩いていた。彼も私たちに気づいたようで、目が合った途端に驚いて瞠目したのだった。

「凛? それに高階さんも……どうしたんですか?」

「裁判を傍聴しに来たのよ。ねえ、お兄ちゃんもこれからお昼?」

「ああ。そうだよ」

「せっかくだから、ご飯一緒に食べない?」

 もちろん、お兄ちゃんの奢りで。

 そんな凛の心の声がどこからか聞こえてきたのは、きっと気のせいではない。

 □

「わあ、美味しそう!」

 私たちは裁判所のすぐそばにある喫茶店、bonono(ボノノ)に来ていた。

 bononoはbono・bonaの兄妹店ということで、この店の料理も可愛い飾りつけがされている。私が頼んだ白身魚のフライには、貝殻の形に型抜きされたポテトが添えられていた。

「それにしても、藪から棒にどうしたんだ? 傍聴に来るなんて」

「ふふ、そういう気分だったのよ。たまにはお勉強も必要でしょう?」

 アイスコーヒーを飲みながら、凛は言った。彼女はあまりお腹が空いていなかったらしく、飲み物だけ注文していた。
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