怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する
そこまで言われてしまえば、もはや断れない。私は頭をフル回転させながら、口を開いた。

「……えーっと、誕生日は二月十五日で、血液型はO型です。趣味は……美容部員をしていることもあって、コスメを集めるのが好きです」

「ああ、なるほど」

 あまりにも薄っぺらい自己紹介になってしまい、私は内心頭を抱える。これが面接ならば、即座に落とされるに違いない。

「法律には正直あまり詳しくなくて……傍聴した時も、色々びっくりしました」

「例えば?」

「例えば……ドラマだと、裁判長が『静粛に!』って言いながら小さな木槌を叩いてるイメージなんですけど、そもそも木槌がなかったり、ですとか」

 言葉を選ぶにも選べないので、私は素直に思ったことを口にした。

 さすがに呆れられるかと思いきや、優流は深く頷いたのだった。

「いや、たしかに日本の法廷だと木槌はないですけど、外国の法廷では用いられているので、そのイメージはあながち間違ってないです」

「そうなんですか?」

「そうなんです。やはり、裁判だと場が荒れたりすることもありますので、そういう時に……」

 優流は食後のドリンクを待つ間、私に法廷の豆知識を話してくれた。優流の博識ぶりに驚きながらも、私はすっかり話に聞き入っていたのだった。
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