怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する
「お、美味しい……!」

「ふふ、良かったです。白身魚のフライも、久しぶりに食べると美味しいですね。最近はカニクリームコロッケばっかり頼んでしまうので」

「やっぱり、カニクリームコロッケが一番おすすめですか?」

「そうですね。ただ、秋頃に期間限定で出るカキフライとかも美味しいですよ」

 ランチを食べ進めながら、たわいのない会話が続く。少し前までは会話を続けるのがやっとだったのに、今は自然と会話が続いていた。

「そうだ。せっかくなので……」

「?」

「高階さんのことも、ぜひ色々教えてください」

 皿の上が空になったタイミングで、優流は言った。思いもよらぬ言葉に、私はつい氷水の入ったグラスを手から落としそうになった。

「っ、えっと……その、はずかしながら、自己紹介するほどのことが思い浮かばないので……」

 凛から聞いた優流の華々しい経歴を思い浮かべると、自己紹介なんてできるはずがない。

 しかし、優流はそこで引き下がることなく食い下がる。

「趣味とか誕生日とか、そういうので構いませんので」

 先ほどの私の言葉をそっくりそのまま返すように、彼は言った。
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