怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する
「だいぶ前に自分と同期、それから異動で新しくやって来た上司二人で来たのですが、その時は全員、ホットコーヒーを頼んだんです。男四人のテーブルにハートの皿が二つ置いてあるのを、想像してみてください。……絵面としては地獄ですよ」

「……っ、はははっ!」

 上品な笑い方で抑えることができず、私はとうとう声を上げて大笑いした。手で口元を抑えて声のボリュームを下げるけれども、笑いが収まる気配はない。

 笑いすぎて息ができないなんて、小学生ぶりぐらいのことだった。

「すみません、まさかそんなに大笑いされるとは思わなくて……」

「いっ、いえ……っ、ふふっ、ごめんなさい。その光景を思い浮かべたら、何だかおかしくって……!」

「やっぱり、そうでしょう?」

 そう言った優流も、当時のことを思い出したのか笑っていた。彼とこんな下らない話で笑い合うなんて、思ってもみなかったことだ。

 優流と過ごす時間が、たまらなく楽しい。

 私ははっきりと、そのことを自覚していた。
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