怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する
「そろそろ、飲みごろみたいですね」

 ハーブティーを持ってきた店員がテーブルに置いていった砂時計は、ペットの話が一区切りしたところで、ちょうど砂が落ち切った。

 ティーポットから透明なティーカップに紅茶を注ぐと、レモンバーベナとミントの香りがテーブルの上に広がる。爽やかな香りは、初夏の季節にぴったりだ。

「すごい……本当に真っ青」

「一見とんでもない色合いですけど……何だか、面白いですね」

 ティーカップの上にできあがった真っ青な水面を覗き込みながら、私たちは驚きのあまり目を丸くした。

 私と優流が選んだのは、季節限定メニューの「星空を眺めて」というハーブティーだ。バタフライピーという青い花がブレンドされているので、お茶も深い青に染まったのである。

 そして、このハーブティーにはひとつ面白い仕掛けがあった。

 レモン汁をひとすくい乗せたスプーンでかき混ぜると、ハーブティーは紫色に様変わりした。

「わあ、御堂さん! 本当に一瞬で紫色に変わりましたよ!」

「びっくりした……手品みたいだ。せっかくなんで、ケーキと一緒に写真撮りますか?」

「はい!」

 ケーキの後ろにティーカップを並べて、私はスマートフォンで写真を撮った。
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