怜悧な裁判官は偽の恋人を溺愛する
「あ、あれ……?」

 しかし、カメラに写った紅茶やケーキは、実物に比べると可愛さが半減してしまっている。私が首を傾げていると、優流が「どうしました?」と声をかけてくれた。

「何というか……写真の写りがイマイチになってしまって……」

 優流に画面を見せると、彼は少し考えてから自分のスマートフォンを手に持った。

「少し、ケーキとカップの配置を調整してみても良いかもしれませんね。俺も、試しに撮ってみて良いですか?」

「は、はい」

 優流はティーカップとポットをケーキ皿に少しだけ寄せて、スマートフォンで写真を撮る。

「大きくは変わりませんが、どうでしょう」

 彼はそう言ってスマートフォンの画面を見せてくれたのだが、画面に表示された写真を見て、私は間抜けな声を上げた。

「え……え!?」

 優流が撮影した写真は、まるでプロが撮ったかのようなクオリティであった。ケーキは美味しそうに写っているし、グルメ雑誌に載っていそうだ。私の写真とは、まさに雲泥の差である。

「えっと……御堂さんって、カメラとか写真とか……そういうのが得意だったりします?」

「得意というほどではないですけど、昔から凛に言われて写真を撮る機会が多かったので……撮り慣れてるというのはありますね」

「な、なるほど、どおりでお上手だと思いました」

「あいつ、子どもの時から写真へのこだわりがすごくて。ああしろ、こうしろ、と指図されてるうちに、何となくコツが身についていったんです。オーディション用の写真や、SNSに上げる用の写真とか……何枚撮ったか分かりませんよ」
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