月とスッポン      ありのままは難しい
「今、死んでも悔いはない」
「今死なれたら後味が悪いからやめて頂戴」
「はい。生きます」
「それで?買い物?少しは美容に気を使う気になったのかしら?」

お姉様の問いに素直に答える。
来たがいい何わからないの、撤退するところですと。

クスクス笑うお姉様は妖精の様だ。

「ついてきなさい」

近くにいる男性に声をかけ、歩き出す。
「どこまででも」とお姉様の後を追った。


VIP専用ルームといったところだろうか?

ロココ調に統一されたお嬢様の為の部屋だ。

迷う事なく猫脚のソファに座るお姉様は一枚の絵の様だ。
写真を撮って待受画面にしたい。スマホを握る。

「いいからそこに座りなさい」
「はい」

写真を撮るのも忘れ、お姉様の前に座る。

今すぐにでも絵師を呼び、お姉様の姿を描かせ美術館に飾るべきだ。

お姉様の背後に立つ男性に声をかける姿など国宝級。

上流階級の世界に平民が迷い込んだ物語など実際にある出来事として認識していいものなのだろうか?

一生の記念だと目に焼き付けよう。

美しすぎるお姉様を堪能していると、洗練されたお姉さんが飲み物と共に入ってくる。

「それで、どういう経緯なのかしら?洗いざらい話してしまいなさい」
「はい」

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