月とスッポン ありのままは難しい
「その手の乗るな。ですね。心に刻んでおきます」
「こう言った話を信じるとは思いませんでした」
「こう言ったって?」
「法力。いわゆる神力や霊能力などの類です」
「そうですか?」
「おみくじや占いなどは」
「信じてません」
「神様は?」
「いるかとは思うけど、助けてくれるとは思ってません」
「それを信じていないと言うのではないですか?」
「そうですか?お天道様は見ているって思ってますけど」
「神道、太陽信仰ですよね」
「そこまで深く考えてないですよ。いい事も悪い事も全部返ってくる。誰も見てないと思ってもお天道様は見ている。祖母によく言われました」
「そうなんですか」
「お天道様っていうよりも体験談なんだと思います。人の苦労を顧みず自分の欲望に正直に生きていたそうです。その結果が私です。
自分が生活するのに精一杯なのに私を押し付けられ、育てる羽目になった」
横川を出て、次の目的地へと走り出す。
「貧しかったけど、祖母は精一杯私を育ててくれていたと思います。始めは父からの仕送りもありましたけど、それも途中から途絶えがちになり、忘れた頃に入ってくる。当てには出来ない。1人じゃ無理だって、綾華さんに頭をよく下げてました」
「それは」
暗い話は好きじゃない。
だから、なるべく明るく話すようにしている。
「うまく回っていたと今は思いますよ。祖母が夜私達を見ているから綾華さんは夜勤に入れた。
祖母は体が思うように動けなくなったからこそ、海や翔空を見る事で、なんと生活が出来た。
私たちも貧しいながらも、そこまでの貧困でもなければ放置子にもならずに済んだ。Win-Winです。
祖母の介護も覚悟してましたけど、綾華さんがいたからどうすればいいかわからないって事もなかったですしね」
「まぁ、その前に死んじゃったんですけど」
比叡ドライブウェイの料金所を出る。
ナビに案内されながら、西教寺に向かう。
「そうだったんですね」
「とっくに調べ上げているかと思いました」