あの夏、君と最初で最後の恋をした

買い物から帰った私を颯太は笑顔で迎えてくれた。

「でね、たくさんの人には話しかけてもらってお喋りしちゃった」

リビングで勉強の合間に買い物途中にあった事を話すと颯太は嬉しそうに聞いてくれた。

「友花は昔から人見知りで恥ずかしがり屋だからいつも僕の後ろに隠れてたのに、そうやってお喋り出来たんだから凄いよ」

「いやいや、凄くはないよ。
お喋りしただけだもん」

「成長だよ、凄い事なんだよ」

「そんな事……」

「凄いよ、偉い。
あまり知らない場所、ひとりで行動した事ない場所でひとりで行動して、知らない人に挨拶してお喋りして。
頑張ったね、友花」

笑顔でそう言ってくれる颯太。
嬉しくて、少し恥ずかしい。

「あ、颯太は?
やりたい事出来た?」

「うん、出来たよ。
ありがとう」

「良かった!
何をしたの?」

「うん。
秘密」

「えー!
なにそれー!」

笑いながら話をすると、朝見た颯太の表情はやっぱり見間違いだったのかな、と思う。

「さ、今日はこのページを済ませたらお昼からは一緒に出かけようか」

「お出かけ?
どこいくの?」

「映画見に行こう。
それに最近は観光客を意識して街中に可愛いカフェとか出来てるみたいだよ。
友花好きでしょ?可愛いカフェ」

「本当に!?
嬉しい!
デートだね!」

映画もカフェも、もう何度颯太と一緒にいったか分からない。
だけど、それは幼なじみとしてだ。

今は違う。
幼なじみとしてだけの好きじゃない、
ちゃんと、別の好きを伝えた。
颯太もそんな私に応えてくれて、
キスをした。

これって、
ちゃんと恋人同士って事だよね。

「颯太大好き!」

そう言って颯太に抱きつく私の頭を颯太が優しく撫でてくれる。


だけど私の頭を撫でるその大きな暖かい手は、
少し、震えていた。








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