あの夏、君と最初で最後の恋をした

㊺

「ここで、颯太と一緒に過ごしたの」

海を見ながら隣に立つ人にそう話す。

「大人になるに連れて、あの夏の日々は幻や夢だったんじゃないかって思う事もあった。
だけど、やっぱり私はあの夏の日、
颯太と一緒に過ごしたの。
あの夏に、私は颯太と最初で最後の恋をしたのよ」

私の話を黙って、
だけど真剣な表情で聞いていたその人は、
ゆっくりと口を開いた。

「幻でも夢でもないよ。
君は颯太君と、ここで恋をした」 

「信じるの?
こんな話」

「信じるよ。
君が言うんだから」

一点の曇りもないその人の目は、
本当に私の話を信じていると分からせるには十分だった。

「……重たいって思わない?」

「どうして?」

不思議そうにそう聞き返すその人に、こっちが拍子抜けしてしまう。

「中学生の子どもの頃とはいえ、私は颯太の事を本当に愛していたし、それはきっとこれからも変わらない。
でもそれって、貴方から見たら重たいかなって」

私の言葉に、優しく笑うその人に、
私は胸がぎゅっとするのを感じた。

「中学生の子どもだからこそ、そんなにも純粋に真剣にお互いを好きでいられたんだと思うよ。
羨ましいとは思うけど、重たいだとかは思わないよ」

「……本当に、優しくて暖かくて、変わってるわよね」

「え?
それ、俺褒められたの?」

「当たり前じゃない」

ふたりで笑い合って手を繋ぐ。
そのまま私の手を引いて、
私の隣を一緒に歩いてくれる。

不意に彼が立ち止まり、私と向き合う。


「友花、俺と、
……じゃない、えっと、
僕と、結婚して下さい」

そう言ってポケットから指輪を出して差し出してくる。

「ずっと一緒に、隣を歩きたいです。
ずっと一緒に笑い合っていたいです。
必ず幸せにします」

彼の顔が赤いのは、夕陽のせいだけじゃないはず。

「……私も、
優斗とずっと一緒に隣を歩きたい。
ずっと一緒に笑い合っていたい。
私も、優斗を幸せにしたい、です」

「それって……」

きっと私の顔も彼と同じくらいに赤く染まっているのだろう。

頷くように首を縦に振ると、
彼は更に真っ赤な顔で私を抱きしめてきた。

「ありがとう!
絶対幸せにする!
一緒に幸せになろう!」

「うん!」



颯太、
私、今、幸せだよ。

私、これからこの人と幸せになるよ。
もっともっと、幸せになるよ。

見ててね、颯太。

もう、どれだけ褒めても足りないくらいに、世界一幸せになるから。



「皺くちゃのおじいさんとおばあさんになっても一緒にいよう!
颯太君に認めてもらえるくらいにもっともっと、
世界一幸せになろう!」

……ああ、こんな時まで同じ事を考えているなんて。

真っ赤な顔で嬉しそうに笑うこの人が、
愛しくて仕方がない。


ありがとう、颯太。
この幸せは、颯太がくれたんだよ。

あの時、私を抜け殻から救ってくれてありがとう。
私に大切な物を思い出せてくれて、
教えてくれて、
ありがとう。


ずっとずっと、
颯太は私の大切で大好きな男の子です。

さあ、
私の物語はまだまだこれから。


「世界一幸せになろうね!」




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