あの夏、君と最初で最後の恋をした
⑧
どれだけ颯太のいない毎日が辛くても、
私の時間は流れていく。
止まっているのは、
颯太の時間だけだ。
生きている私は毎日、同じルーティンを繰り返して変わらない毎日を生きていかなければいけない。
ただ、
夏休みとなると少し違う。
1ヶ月以上の長い夏休み。
颯太がいない、夏休み。
去年の夏休みは颯太がいない毎日がまだ現実味がなくて、
だけど、
どこかで颯太がいない事も、分かっていて、
だけど認めたくなくて、
ただただ、泣いていた。
部屋にこもってただただ颯太を思っていた。
これは夢で、
朝起きたらあの日に戻っていて、
私はいつものように家を出て、
そして颯太と一緒に学校にいくんだ、
そう、これは夢。
悪い夢。
だから、朝起きたら颯太は変わらず私と一緒にいてくれる。
そう思って無理矢理眠るのに、
朝起きても、
やっぱり颯太はいなくて。
そんな現実に毎日打ちのめさて、
泣いて過ごした。
「今年はママの田舎へいくの、どうする?」
夕食を食べながらママが少し遠慮がちにそう聞いてきた。
四国にあるママの実家には去年をのぞいて毎年遊びにいっていた。
颯太も一緒に。
颯太が一緒にいくようになったのはいつからだったか。
仕事が忙しく出張も多い颯太の両親。
颯太の両親の実家も遠い事から颯太は小さい頃からウチで過ごす事もよくあった。
その流れで夏休みは一緒に四国のママの実家に遊びに行くようになった。
都会と違って空気も水も綺麗で、夜には満天の星と月が暗闇を明るく照らす、
そんな場所が私も颯太も大好きだった。
5年前にお爺ちゃんとお婆ちゃんが相次いで亡くなった後も、お爺ちゃんお婆ちゃんのお墓参りと、誰もいない家の手入れもあって毎年夏には遊びにいっていた。
「友花は受験もないし、あっちでゆっくり過ごすのもいいんじゃないかしら?」
そう、本来の中学3年なら夏休みは高校受験で勉強ばかりになる。
だけど中学受験をして今の学校に入った私は高校受験がなく、エスカレーター式に高校に上がれる。
だからこそ、この夏休みの長い時間を私にどう過ごさせるべきかママも悩んでいるのだろう。
このままこの家にいても、
こうして颯太を思っているだけなのだから。
そんな私をずっと見ているのは、
きっとママだってパパだってやるせない思いのはずだ。
「紬も顔を出すって言ってたし、
紬が帰ってきてから一緒にいくのはどう?」
「紬ちゃん、帰ってくるの!?」
ママから思いも寄らない名前が出てきて、私は少し大きな声で聞き返す。
「ええ、来月のはじめには一度帰ってくるって」
「そうなんだ……」
紬ちゃんが帰ってくる……。
紬ちゃんはひと回り離れた私のお姉ちゃんだ。
大学卒業後、海外で仕事をしている紬ちゃんはこっちに戻ってくる事はそう多くない。
ひと回りも離れているからか、私と紬ちゃんは姉妹喧嘩なんて一度もした事がない。
もっとも、紬ちゃんからしたら私は歳下過ぎて喧嘩にもならない相手だったのだろう。
紬ちゃんはいつも明るくて優しい。
私のくだらない話も笑って聞いてくれたし、
私がママに叱られた時も、やっぱり笑って慰めてくれた。
幼い私と颯太とよく遊んでくれた。
私も颯太も紬ちゃんが大好きだ。
最後に紬ちゃんに会ったのは颯太のお葬式だった。
ただただ泣きじゃくる私を、
黙って抱きしめてくれた紬ちゃん。
紬ちゃんにとっても颯太は弟のような、大切な存在だったのに、私の前では気丈に振る舞い、涙を流す事はなく、
ずっとずっと、私に寄り添ってくれた。
紬ちゃんがいたから、
あの時私はそのまま颯太の後を追わなかったんだと思う。
「……紬ちゃんが来るなら、いこうかな」
私の言葉にパパとママはホッとしたように笑った。
……パパ、ママ、
ごめんね。
いつも、気を使わせて。
いつも、心配かけて。
だけど、
ダメなの。
颯太がいない、
それだけで、
私の世界は真っ暗なの。
上手に、笑えないの。
ごめんね、
パパ、ママ。
ごめんね、紬ちゃん。
ごめんね、
颯太。
私の時間は流れていく。
止まっているのは、
颯太の時間だけだ。
生きている私は毎日、同じルーティンを繰り返して変わらない毎日を生きていかなければいけない。
ただ、
夏休みとなると少し違う。
1ヶ月以上の長い夏休み。
颯太がいない、夏休み。
去年の夏休みは颯太がいない毎日がまだ現実味がなくて、
だけど、
どこかで颯太がいない事も、分かっていて、
だけど認めたくなくて、
ただただ、泣いていた。
部屋にこもってただただ颯太を思っていた。
これは夢で、
朝起きたらあの日に戻っていて、
私はいつものように家を出て、
そして颯太と一緒に学校にいくんだ、
そう、これは夢。
悪い夢。
だから、朝起きたら颯太は変わらず私と一緒にいてくれる。
そう思って無理矢理眠るのに、
朝起きても、
やっぱり颯太はいなくて。
そんな現実に毎日打ちのめさて、
泣いて過ごした。
「今年はママの田舎へいくの、どうする?」
夕食を食べながらママが少し遠慮がちにそう聞いてきた。
四国にあるママの実家には去年をのぞいて毎年遊びにいっていた。
颯太も一緒に。
颯太が一緒にいくようになったのはいつからだったか。
仕事が忙しく出張も多い颯太の両親。
颯太の両親の実家も遠い事から颯太は小さい頃からウチで過ごす事もよくあった。
その流れで夏休みは一緒に四国のママの実家に遊びに行くようになった。
都会と違って空気も水も綺麗で、夜には満天の星と月が暗闇を明るく照らす、
そんな場所が私も颯太も大好きだった。
5年前にお爺ちゃんとお婆ちゃんが相次いで亡くなった後も、お爺ちゃんお婆ちゃんのお墓参りと、誰もいない家の手入れもあって毎年夏には遊びにいっていた。
「友花は受験もないし、あっちでゆっくり過ごすのもいいんじゃないかしら?」
そう、本来の中学3年なら夏休みは高校受験で勉強ばかりになる。
だけど中学受験をして今の学校に入った私は高校受験がなく、エスカレーター式に高校に上がれる。
だからこそ、この夏休みの長い時間を私にどう過ごさせるべきかママも悩んでいるのだろう。
このままこの家にいても、
こうして颯太を思っているだけなのだから。
そんな私をずっと見ているのは、
きっとママだってパパだってやるせない思いのはずだ。
「紬も顔を出すって言ってたし、
紬が帰ってきてから一緒にいくのはどう?」
「紬ちゃん、帰ってくるの!?」
ママから思いも寄らない名前が出てきて、私は少し大きな声で聞き返す。
「ええ、来月のはじめには一度帰ってくるって」
「そうなんだ……」
紬ちゃんが帰ってくる……。
紬ちゃんはひと回り離れた私のお姉ちゃんだ。
大学卒業後、海外で仕事をしている紬ちゃんはこっちに戻ってくる事はそう多くない。
ひと回りも離れているからか、私と紬ちゃんは姉妹喧嘩なんて一度もした事がない。
もっとも、紬ちゃんからしたら私は歳下過ぎて喧嘩にもならない相手だったのだろう。
紬ちゃんはいつも明るくて優しい。
私のくだらない話も笑って聞いてくれたし、
私がママに叱られた時も、やっぱり笑って慰めてくれた。
幼い私と颯太とよく遊んでくれた。
私も颯太も紬ちゃんが大好きだ。
最後に紬ちゃんに会ったのは颯太のお葬式だった。
ただただ泣きじゃくる私を、
黙って抱きしめてくれた紬ちゃん。
紬ちゃんにとっても颯太は弟のような、大切な存在だったのに、私の前では気丈に振る舞い、涙を流す事はなく、
ずっとずっと、私に寄り添ってくれた。
紬ちゃんがいたから、
あの時私はそのまま颯太の後を追わなかったんだと思う。
「……紬ちゃんが来るなら、いこうかな」
私の言葉にパパとママはホッとしたように笑った。
……パパ、ママ、
ごめんね。
いつも、気を使わせて。
いつも、心配かけて。
だけど、
ダメなの。
颯太がいない、
それだけで、
私の世界は真っ暗なの。
上手に、笑えないの。
ごめんね、
パパ、ママ。
ごめんね、紬ちゃん。
ごめんね、
颯太。