口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
「金沢さんがそんな人だなんて、思わなかった!」

 出入り口を塞いで声を荒らげる姿は目立つようで、披露宴会場に集まった参列者達からの視線が痛くて仕方なかった。

「あの……」
「いつもおどおどして! 人の顔色を窺ってばかり! そんな状態でしか仕事ができない時点で、園長に強く言って辞めさせるべきだったわ!」

 怒りの導火線に火がついた同僚は、つぐみをさっさと退職させるべきだったと匂わせるような発言をし始めた。

(やっぱり私は、みんなから嫌われていたんだ……)

 遠回しに悪意をぶつけられたつぐみは、失意のどん底にいた。

(……帰った方が、いいよね……)

 トイレで黒のドレスに着替えて予定通り参加した所で、彼女と同じテーブルを囲むことになるのだ。
 現時点でこのような状況では、トラブルなく披露宴を終えるのは難しい。

「ずっと、気に食わなかったのよ!」

 つぐみは何を言われても反論することなく、じっと黙って嵐が過ぎ去るのを待ち続ける。

(これ、いつまで続くんだろう……)

 彼女が口にする愚痴など、まったくといっていいほど耳には入らなかった。
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