口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
 ──清広がいなくなってから二週間後。

(こんなんじゃ、駄目だ……)

 彼が心配なつぐみは、仕事中に我に返る。
 しっかりしなければと自身に喝を入れた彼女は、夜遅くまで彼の帰りを待つのはやめた。

 ──清広と出会ってから三か月後。

 彼がいないのが当たり前になった彼女は、園児を寝かしつけている最中に清広のことを考える時間が増えた。

 心配しても仕方がないと頭では理解しても、心が追いつかないのだ。

(私には、彼の無事を願うことしかできない……)

 つぐみは己の無力さを実感した。

 ──そして、彼と出会ってから半年後。

「お疲れ様、でした……」
「金沢先生。安堂海曹長が、お待ちかねよ」

 勤務を終えたつぐみが職員室を出たところで、目黒に呼び止められた。

 上司から清広の名前を出てきた理由がわからず固まれば、彼女は窓の外を指差し、満面の笑みを浮かべてひらひらと手を振った。

 これは、さっさと帰れと言う合図だろう。

「ずっと心配してたこと、彼氏さんにも伝えなきゃ駄目よ?」

 謎のアドバイスを受けたつぐみはわけもわからぬまま頭を下げると、保育園を出て──。
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