口下手な海上自衛官は、一度手放した元許嫁に海より深い愛を捧ぐ
(びっくりした……)

 一度自室に戻り、着替えを持ってから風呂場へ引っ込んだつぐみは、湯船に身を沈め、清広のことを考える。

(もしもあのまま了承していたら、今頃……)

 彼女の妄想は止まらない。

『つぐみ……』

 鍛え抜かれた身体を惜しげもなく晒し、つぐみに覆い被さる清広の姿を想像した彼女は、顔を真っ赤にしながらバタバタと両手足を動かして水を跳ねる。

(清広さんと、その先に進みたかった、なんて……)

 はしたないことを考えてしまうほどに、清広へ惚れ込んでいると知った彼女は、頬に集まった熱を取り除くために、何度も水をかけて冷静さを取り戻そうと必死になった。

(私は清広さんの、どこが好きなんだろう……?)

 つぐみは水音を響かせながら、清広の好きところを脳裏に思い浮かべる。

(優しくて気が利くところ。イケメンで、料理ができて、お金をたくさん持っているところ。私のことが大好きだと、言葉だけではなく全身で言い表してくれるところ。ほとんど家に帰って来ないのは……マイナスポイントのはず、なんだけどな……)

 つぐみと清広が再会し、同棲を初めてから半年が経過しているが──。
 二人が面と向かって会話をした時間は、今日を含めれば四日しかない。
< 85 / 160 >

この作品をシェア

pagetop