禍津神の刹那の恋 〜鬼に愛されながら、妖の身で人間へと恋をする〜

5.禍津神と人間の恋

 守人とは、あれからも定期的に何度も会った。
 そして……本当によく何かをくれる。

 小さな正方形の和紙をもらった時には、一緒に鶴を折った。交換して一つは巾着袋の中に。
 線香の香りは結構好きだなんて話をしたら、色んな匂いのする線香も数本ずつくれるようになった。

 彼が望んだように、いつも私はそれらを身につけるか巾着袋に入れて持ち歩くかしていた。

「紅羽……好きなんだ。君といられれば他には何もいらない。俺と付き合ってくれないか」

 神社の高台の村を見下ろせるその場所で、彼が私を見つめる。

「禍津神に愛の告白? あなたは本当に酔狂な人間ね、守人」

 彼が、懐から何かを取り出した。
 それが何かは見当がついている。露天で買ったという安っぽい指輪をはめたことがあるからだ。指のサイズを測るためだとは思っていた。

 彼は……本当によく私に貢ぐ。

「紅玉の指輪だ。紅羽に似合うと思って」

 紅玉……ルビーね。

「ずいぶんと奮発したわね」
「受験も終わったし、パーッとね。一緒についてきてほしい」
「……指輪は受け取るわ。返事は……少しだけ待って」
「分かった」

 彼がはめるのは、私の左手の薬指。

「守人と結婚はできないわよ?」

 悪戯っぽく挑発するように言ってみる。
 なにせ、私の姿は彼以外の人間には見えない。

「ごっこでいいんだ、ごっこで」

 彼も悲しむ様子もなく、笑ってくれる。

 当然だ。
 最初から分かっていた。
 私たちの間に、未来なんてないって。
< 7 / 12 >

この作品をシェア

pagetop