連理の枝と比翼の鳥 リアムとトビアス

連理の枝と比翼の鳥
トビアス・マンダレイとリアム

天にあっては願わくは比翼の鳥とならん
地にあっては願わくは連理の枝とならん
白居易「長恨歌」(唐時代)



「ママ」と呼ぶ人はたくさんそこにはいた。

地下なので換気が悪く、安香水と酒、煙草、油臭い何か、腐った食べ物、バニラの臭い、
あらゆる臭いが混然一体となり、その場の空気を重くしていた。

狭い通路にはスパンコールやけばけばしい色取りの衣裳やショールがつるされており、
床にはハイヒールがあちこちに転がっている。

「ママ、お腹すいたよ」

僕があわれっぽい声を出すと

「これを食いな」

誰かが、食べかけの骨付きチキンを投げてよこした。

僕は床に転がったチキンを拾い、むしゃぶりつく。

そして衣裳のわずかな隙間にもぐり込んで眠った。

そこは昼が夜になり、夜が昼になる世界。


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