連理の枝と比翼の鳥 リアムとトビアス
トビアス様は、親指の爪をかむようなしぐさをして

「弁護士と話がつくまでは、仕方がないだろう。
ルーミン、手伝いの人にはしばらく延期をしてもらうように伝えてくれ。
もちろん、お金は支払とね」

ルーミンは渋々というようにうなずき、トビアス様は肩の荷が降りたように安堵の表情を見せた。

「リアム、これでいいかね?ルーミンの留守の間、ここの雑用をやってもらう。
もちろん君にも給金をだすからね。」

僕は大きくうなずいた。

尻尾があればブンブン振っているはずだ。

「ぜひ、お願いします!!ご主人様のお役に立てるよう、精神誠意努力をします」

それを見て、ルーミンは不服そうに、チッと舌うちをした。

僕のような、わけのわからない馬の骨を、このような豪邸に迎え入れること。
普通ではありえない。

本来ならきちんとした身元保証人が必要になる。

ただ、僕にとっては、転んでつかんだ石がすばらしい宝石であり、ビッグチャンスなのだ。

「さぁ、立ちなさい。あと、私はご主人様でない。トビアスと呼んでくれ」
「はい、トビアス様」

そのアンバーの瞳は柔らかい。

この人の見る世界は、薔薇色に満ちているのか。

そして温室は、外から鳥のさえずりが聞こえるほど静かだ。

「お茶を、入れなおしします」

ルーミンが紅茶ポットに手をかけた。

「あっ、僕にお茶のいれ方を教えてください。ルーミンさんっ!」

僕はタブレットと足環を持ち、さっさと歩くルーミンの後を追った。
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