君が星を結ぶから
かがやく。太陽4
二週間後。学校が夏休みに入ると、さっそく流星先輩からDMが届く。
【お疲れ様。明日、一時から学童でスイカ割りがあるんだけど、もし良かったら結もどうかな?受験勉強で忙しい?無理せず、結の都合を優先させていいからね。受験、応援しているよ】
このDMを読んで私はずるいなぁと思う。振ったくせに、自分のいる種千高校は受けるなと言ったくせに、私を気遣ってこうやって優しい言葉をかけてくる。これが流星先輩の素なのだろうか。それとも悪い噂通りの裏の顔があるのだろうか。なんとか、それをたしかめたい。
受験だって行きたい高校は、先輩のいる種千高校しかない。模試だって平均点数をぜんぜん越えてるし、正直、受験勉強には余裕がある。
だから【連絡ありがとうございます。受験勉強も大丈夫そうなのでスイカ割り行きます。楽しみです】と、迷わずDMを返信した。
次の日。学童に行ってみると、子どもたちはちょうど昼ご飯を食べたあとで、スイカ割りのスイカが届くのを待っていた。
「スイカ待ってる間、コマでもしようぜ」と、蒼君が提案すると何人か子どもたちが集まってコマ回しが始まる。
コマは昔ながらの紐を巻いて回すやつで、子どもたちは床に轢いてあるコマ板の上で、コマをぶつけ合わせて戦ったり、自分の手のひらの上でコマを回す技などを練習して楽しむ。
流星先輩も混ざって子どもたちとコマで遊んでいる。
それを見ていた私は、茜君から声をかけられた。
「結ちゃんも一緒にコマやろうよー」
そう言って茜君は、私の手のひらの上にコマと紐をぽんと置く。
とりあえず見よう見真似で挑戦してみるが、私の投げたコマは、コマ板に打ち付けられるだけでまったく回らない。どうやらコツがいるようだ。
すると急に先輩の手がすっと伸びてきて私の手を優しく掴む。そして「コマを投げるときは力任せじゃなくて、軽くこう手首でスナップを効かすんだよ」と、私の手を実際に使って先輩が教えてくれた。
急なことで照れてしまい私は赤面してしまったが、先輩はお構いなしに無邪気な笑顔をこっちに向けながら、「説明下手でごめん。わかった?」と、こっちの反応を伺う。
きっと意識してるのは私だけで、先輩は私のことなんて妹のようにしか思ってないのかなと感じてしまい少しへこんだ。
しばらく私がコマを練習していると、うしろから女の子の啜り泣く声が聞こえてきた。
振り返ると、泣いていたのは緑莉ちゃんだった。
「どうしたの?なにかあった?」
声をかけたもののこういうとき、どうすればいいかわからない。さっき昼ご飯の後片付けを手伝いに行ってしまった先輩を呼び戻そうか迷っていると、すぐに蒼君の声がした。
「どうしたんだよ、緑莉」
緑莉ちゃんが涙をこぼしながらこう答える。
「私のコマだけ上手く回らんもん」
いつの間にか茜君もとなりにいて、「大丈夫だよ。初めから上手くできるやつなんていない。コツコツやってれば必ずできるって」と優しく励ました。
「ちょっと俺たちに回し方見せてみ。アドバイスするわ」と蒼君が提案すると、緑莉ちゃんは腕で涙を拭いてから「うん」と返事をした。
きっと緑莉ちゃん。蒼君と茜君が寄り添ってくれたことが嬉しかったんだろうな。
やんちゃな印象だった蒼君と茜君だけど、本当は友達想いですごく優しい一面を持っているのだと今のやりとりから伝わってきた。
「あいつら、いいとこあるだろ。学童では子どもたちのこういうやりとりがしょっちゅうなんだ」
いつの間にかうしろにいた先輩が柔らかく微笑んでそう呟く。そして先輩は話をつづけた。
「緑莉って、お母さんが今病院に長期入院してて、ちょっと心が不安定なんだ。四月に入所したばかりのときなんて、学童に来ることもこわくてわんわん泣いてた。でも、こうやって周りの仲間が優しく接してくれるから、学童が安心できる場所だって気づいて慣れていくことができたんだ」
「学童ってただ子どもをあずかるだけの場所じゃなくて、うまく言えないけどなんか素敵な場所ですね」
心からそう思って呟くと、「うん」と先輩がとなりで嬉しそうに笑った。
しばらくすると学童の玄関の扉が開いて、金髪のお兄さんが箱に入ったスイカを何個も持ってきた。
朝陽さんがそのお兄さんからスイカを受け取ると、さっそく学童の庭で子どもたちがスイカ割りを始める。
その割ったスイカで、朝陽さんがさっとフルーツポンチを作ってくれて、その中にサイダーを入れてみんなで食べた。
学童ってなんだか大家族みたい。冷んやりしゅわしゅわでスイカの甘さにほっぺがこぼれ落ちるほど美味しいフルーツポンチを食べながら、ふと私はそう思った。
【お疲れ様。明日、一時から学童でスイカ割りがあるんだけど、もし良かったら結もどうかな?受験勉強で忙しい?無理せず、結の都合を優先させていいからね。受験、応援しているよ】
このDMを読んで私はずるいなぁと思う。振ったくせに、自分のいる種千高校は受けるなと言ったくせに、私を気遣ってこうやって優しい言葉をかけてくる。これが流星先輩の素なのだろうか。それとも悪い噂通りの裏の顔があるのだろうか。なんとか、それをたしかめたい。
受験だって行きたい高校は、先輩のいる種千高校しかない。模試だって平均点数をぜんぜん越えてるし、正直、受験勉強には余裕がある。
だから【連絡ありがとうございます。受験勉強も大丈夫そうなのでスイカ割り行きます。楽しみです】と、迷わずDMを返信した。
次の日。学童に行ってみると、子どもたちはちょうど昼ご飯を食べたあとで、スイカ割りのスイカが届くのを待っていた。
「スイカ待ってる間、コマでもしようぜ」と、蒼君が提案すると何人か子どもたちが集まってコマ回しが始まる。
コマは昔ながらの紐を巻いて回すやつで、子どもたちは床に轢いてあるコマ板の上で、コマをぶつけ合わせて戦ったり、自分の手のひらの上でコマを回す技などを練習して楽しむ。
流星先輩も混ざって子どもたちとコマで遊んでいる。
それを見ていた私は、茜君から声をかけられた。
「結ちゃんも一緒にコマやろうよー」
そう言って茜君は、私の手のひらの上にコマと紐をぽんと置く。
とりあえず見よう見真似で挑戦してみるが、私の投げたコマは、コマ板に打ち付けられるだけでまったく回らない。どうやらコツがいるようだ。
すると急に先輩の手がすっと伸びてきて私の手を優しく掴む。そして「コマを投げるときは力任せじゃなくて、軽くこう手首でスナップを効かすんだよ」と、私の手を実際に使って先輩が教えてくれた。
急なことで照れてしまい私は赤面してしまったが、先輩はお構いなしに無邪気な笑顔をこっちに向けながら、「説明下手でごめん。わかった?」と、こっちの反応を伺う。
きっと意識してるのは私だけで、先輩は私のことなんて妹のようにしか思ってないのかなと感じてしまい少しへこんだ。
しばらく私がコマを練習していると、うしろから女の子の啜り泣く声が聞こえてきた。
振り返ると、泣いていたのは緑莉ちゃんだった。
「どうしたの?なにかあった?」
声をかけたもののこういうとき、どうすればいいかわからない。さっき昼ご飯の後片付けを手伝いに行ってしまった先輩を呼び戻そうか迷っていると、すぐに蒼君の声がした。
「どうしたんだよ、緑莉」
緑莉ちゃんが涙をこぼしながらこう答える。
「私のコマだけ上手く回らんもん」
いつの間にか茜君もとなりにいて、「大丈夫だよ。初めから上手くできるやつなんていない。コツコツやってれば必ずできるって」と優しく励ました。
「ちょっと俺たちに回し方見せてみ。アドバイスするわ」と蒼君が提案すると、緑莉ちゃんは腕で涙を拭いてから「うん」と返事をした。
きっと緑莉ちゃん。蒼君と茜君が寄り添ってくれたことが嬉しかったんだろうな。
やんちゃな印象だった蒼君と茜君だけど、本当は友達想いですごく優しい一面を持っているのだと今のやりとりから伝わってきた。
「あいつら、いいとこあるだろ。学童では子どもたちのこういうやりとりがしょっちゅうなんだ」
いつの間にかうしろにいた先輩が柔らかく微笑んでそう呟く。そして先輩は話をつづけた。
「緑莉って、お母さんが今病院に長期入院してて、ちょっと心が不安定なんだ。四月に入所したばかりのときなんて、学童に来ることもこわくてわんわん泣いてた。でも、こうやって周りの仲間が優しく接してくれるから、学童が安心できる場所だって気づいて慣れていくことができたんだ」
「学童ってただ子どもをあずかるだけの場所じゃなくて、うまく言えないけどなんか素敵な場所ですね」
心からそう思って呟くと、「うん」と先輩がとなりで嬉しそうに笑った。
しばらくすると学童の玄関の扉が開いて、金髪のお兄さんが箱に入ったスイカを何個も持ってきた。
朝陽さんがそのお兄さんからスイカを受け取ると、さっそく学童の庭で子どもたちがスイカ割りを始める。
その割ったスイカで、朝陽さんがさっとフルーツポンチを作ってくれて、その中にサイダーを入れてみんなで食べた。
学童ってなんだか大家族みたい。冷んやりしゅわしゅわでスイカの甘さにほっぺがこぼれ落ちるほど美味しいフルーツポンチを食べながら、ふと私はそう思った。