Bouquet

「桃瀬さんは好きな花とかあるの？」

「ん〜、どのお花も好きだけど一番って言われたらひまわりかな。白銀くんは好きな花とかあるの？」

花壇に植えられた花は、日に日に大きくなっている。その様子を見るたびに花音は嬉しくなる。植物は我が子も同然。大切に育て、大きくなっていく様子を見るのはまるで育児をしている気分になる。

「俺、花とか全然わかんないんだよな〜。流石にひまわりとか桜はわかるけど。強いて言うなら桜なのかな」

「桜は日本の国花だし、嫌いな人の方が珍しいんじゃない？私も桜好きだよ〜」

「国花？」

「国を象徴する花のことだよ。日本は桜と菊が国花だね。国によって違うんだよ」

湿った風が花音の髪を撫でていく。もうすぐ梅雨の時期がやってくる。梅雨が終われば夏が来て、生徒たちが心待ちにしている夏休みだ。季節が巡っていくのは早い。

「桃瀬さん、もしかして他の国の国花も知ってたりするの？」

「まあ少しだけなら……。イタリアはデイジー。スペインはカーネーション。フランスはアイリス。スロバキアはジャガイモ」

「ジャガイモ！？」

蒼が驚く。花音は（自分も知った時驚いたな）と思いながら蒼に笑いかけた。

「ジャガイモの花言葉はね、「慈愛」とか「情け深い」とかがあるんだよ。野菜にも花言葉があるなんてびっくりだよね」