あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
私の中に巣食うひと
『——それでは、来年の大河ドラマ"誠に誓う"のキャスト公開イベントを始めさせていただきます』
司会者の声がかかり、目の前の報道陣からの大量のカメラを向けられフラッシュがたかれる。
主役から順番に役名と名前を呼ばれ、そして遂に私の番を迎える。
『そして新選組参謀・山南敬助の恋人、芸妓の"明里"役を演じるのは…先日発表のなりたい顔ランキングで堂々の首位に輝きました——及川白雪さんです!』
自分の名前を呼ばれ、私は笑顔を作り立ち上がる。丁寧にお辞儀をすれば返ってくる拍手に女優の微笑みを返し、再び腰を下ろした。
『及川さんは初めての大河出演になりますか、いかがでしょうか』
「とても光栄です。同時に大事な役をいただけて緊張もしてます。芸妓さんを演じるのも初めてなので、今必死で勉強中です」
そういった司会者からの質問に用意していたセリフで流し、一通りキャスト陣の紹介が終わればトークが始まる。そして予定していた時間がくれば最後に視聴者への一言をと言われ無難な言葉を返せば終了となる。
イベントが終わり拍手で見送られながら壇上から引こうとした時、「及川さん!」と大きな声がかけられた。
「先日報道された俳優の新木那由多さんとの熱愛は事実なんでしょうか!?」
ある程度は予想のついていた無遠慮な質問に、私は肯定も否定もせずに笑顔だけを返した。
一同が舞台裏に引き、簡単な挨拶を交わしてその場を抜け、今や専属となったマネージャーの和泉さんに歩み寄った。