あばかれ、奪われる〜セフレから始まる歪愛〜
無言のまま暫く硬直した。そして頭の中で考えを巡らせ、ゆっくりと漣の体を離す。
「らしくないね」
そうひとこと言えば、困ったような笑みが返された。本当に、らしくない。
「まるで別人みたい。どういう心境の変化?」
「心境の変化…か、確かにそうかも」
「?」
「ただ単純にさ、白雪を誰かに取られるのにビビってんだろうね、俺は」
意外な言葉に少しだけ驚いた。いつも腹が立つくらい余裕綽々な漣から"ビビる"なんて言葉、聞くとは思わなかったから。
「一度本当に手にしてしまったら失うのが怖くなる。…俺はもう、白雪が側にいない頃には戻れない」
「…漣」
「俺だけを見ててよ、白雪。どこにいてもいい、何をしても良いから…いつだって、俺だけの君でいて」
縋り付く姿はまるで子供のように健気で、あまりにも不安定だった。
漣の気持ちは分からなくない。大事な人を何人も失い、その度に傷ついてきた人だから、大切な人を作れなかった。けれど同じくらい、誰かに縋らないと寂しくて耐えられなかったんだと思う。そして彼にとってのそれがたまたま私で、今になってようやく本当の意味で手に入れた。
そうなれば、私に対して漣がこれほどまでに気弱になってしまう理由も、仕方ないと思う。