ハッピーエンド・オーバー
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私とは付き合わない・付き合おうとも思わない。
男子生徒の世間話に偶然居合わせた放課後。
こんなのにいちいち感情を揺らしていたらキリが無い。
わかっていても多少なりとも傷つくわけで、けれど、私に傷ついたとか凹んだなんて言葉も似合わないわけで。
(……しょうもな)
学校で存在すべき、自分のキャラクターを私は理解しているから、強がって、気持ちを立て直そうとした。
『しょうもな』
それなのに、いつのまにか私の背後にいた男は、教室の隅まで届くような声量で、私の気持ちを吐き出した。さっきまで談笑していた男子生徒は、私とあきくんを見て『っえ、あ、榛名?』『枢木も、まだ残ってたのかよ〜』と何処か狼狽えている。
その様子をみて、あきくんは私の肩に腕を回した。
『なあ、榛名。モテない男の僻みほどだせえものは無いな?』
あきくんの口調も表情もおだやかなそれだった。だけどその声色は重厚感を孕んでおり、怒りを滲ませていた。
男子生徒たちは逃げるように教室からいなくなり、二人きりになると、あきくんは『ざまあみろ』と、吐き捨てた。
『なにが?』
何気なく訊ねると、あきくんは私の髪に指を通し、するすると撫でた。彼の口角がほんの数ミリ上を向いた。それは私に向けた、幼なじみ専用の笑顔だった。
『はる、ロングだとめちゃくちゃ可愛いのにな』
あきくんの目じりが私の安心を誘う。
私にとって可愛いは対象外で、それでも、あきくんにとって可愛いの対象にはなれる。
だから、私が髪を伸ばす理由には、ほんのちょっとだけ、あきくんが存在しているの。
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